2015年10月02日発行 1397号
【福島事故 拡大続く放射能汚染 豪雨で汚染水・フレコンバッグ流出、「汚染対策」の破綻あらわ】
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9月9〜11日にかけて関東・東北地方を襲った集中豪雨の影響で、福島では、原発敷地からの汚染雨水や除染廃棄物を詰めたフレコンバッグの流出などが発生した。汚染が新たな汚染を呼ぶ福島の実情はどうなっているのか。
汚染雨水とフレコン流出
東京電力は、9月9日、12日、14日に相次いで「雨水漏えい」が起きたと発表した。「漏えい」したのは原発敷地内の汚染水タンクで、Cタンク、H4北・H6タンクエリアの内堰(うちぜき)等から数時間以上汚染水が流出し続けたが、総量は明らかにされていない。東電によれば、このうちH4北タンクエリアから漏出した汚染水には放射性ストロンチウム90が740ベクレル(1gあたり、以下同)。H6タンクエリアからの汚染水には「全ベータ線」核種が300ベクレル検出された。ベータ線核種に内部被曝した場合、人体への影響はガンマ線核種よりもはるかに大きい。
東電は、H4北タンクエリアでの汚染水漏出について、2013年8月に起きた別の汚染水漏えいの際、タンク底部床面に残った汚染によって引き起こされたとしている。2年前の汚染の除去さえできず、それが大雨のたびに新たな汚染を生んでいることを東電みずから認めたのだ。
今回の大雨では、除染廃棄物を詰めたフレコンバッグの流出も相次いだ。特に、高汚染地域・飯舘(いいたて)村からは、土壌や草木などの汚染物質を詰めた除染袋が、近くの新田川に400袋近くも流出して行方不明。下流地域(南相馬市)や海に流れ、新たな汚染の原因となることは明白だ。
今回、茨城県常総市で起きた大規模な大雨被害の原因は鬼怒(きぬ)川の決壊だ。常総市から見て、鬼怒川の上流に当たるのは高汚染地域の栃木県北部。ここから大量の土壌などの汚染物質が運ばれた。常総市など下流地域では汚染が拡大している可能性もあり、詳細な調査が必要だ。
破たんする汚染対策
そもそも、除染で出た土壌などを一時保管するためのフレコンバッグは、通常の工事で使われているものと同じで寿命は3年だ。実際、事故後3年を迎えた2014年頃から、フレコンバッグが破れ、中の汚染物質が漏出する事故が目立つようになった。
その場しのぎの対策しか取られなかった背景には、「3年後までには中間貯蔵施設が稼働するに違いない」という国・東電の根拠なき甘い想定があった。中間貯蔵施設は、用地取得交渉が難航、ようやく対象区域内の企業の所有地を借り上げ一部の保管場所を確保した段階だ。想定通りに進まないとわかった時点で、少なくとも寿命を迎えたフレコンバッグ内の汚染物を新しいバッグに移すなどの対策が必要だが、行われていない。まだ除染の終わらない地域も残る上、保管場所の確保もできず見通しは立たない。
凍土壁失敗と垂れ流し
汚染された地下水を汲み上げ人工的に海に垂れ流すサブドレン計画を進めてきた東電は、ついに9月14日、「浄化」した地下水838トンを初めて福島第一原発付近の港湾内に放出した。加害者である東電には汚染を除去する責任があり、福島の多くの漁業者らが反対を続ける中で、東電による地下水放出(「垂れ流し」政策)の既成事実化は、東電による加害者責任放棄の容認につながる。国・東電の責任による汚染除去を強く求めなければならない。
一方、東電が地下水対策の切り札としていた「凍土遮水壁」計画は壁にぶつかっている。世界的にも例のない凍土遮水壁計画が、実現が疑問視されながら中止もされず続けられている背景に、グローバル資本の利権がある。
この工事を請け負っているのは大手ゼネコンの鹿島。この工事費用345億円は、福島原発事故の対策費ではなく、技術開発という名目で国が負担する。技術開発支援として、失敗しても鹿島は責任を問われず税金から工事費が支払われる(6/3「週刊ダイヤモンド」)。原発事故の汚染水対策という、日本の未来にかかわる重要な国家プロジェクトを、成功するかどうかもわからない企業の「一か八かのギャンブル」に委ねる。グローバル資本に税金を垂れ流したあげく、失敗したら汚染水も海に垂れ流せばいい―これが今、福島で起きている事実だ。
グローバル資本のための汚染対策を、市民の声を聞き住民本位の対策に根本的に転換しなければならない。
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