2015年11月06日発行 1402号

【ミリタリー 武力行使のための交戦規定見直し 戦争法実動を許さない】

 自衛隊の武力行使をいつでもどこでも可能にする安全保障関連法=戦争法が9月30日、「公布」された。「来年3月末までの施行」に向け、防衛省・自衛隊は「現場部隊が武器を使用する具体的な基準などを定める部隊行動基準」(ROE)の見直しや訓練計画の策定、訓練の実施など「準備作業」を本格化させることを明らかにした。

 中谷防衛相は「拙速を避け周到な準備を行うことが不可欠。ROEなどの作成は慎重の上に慎重を期す」(9/29記者会見)と言う。だが、8月の国会審議中に暴かれた自衛隊統合幕僚監部(統幕)作成の「内部文書」(統幕が国会審議前に「軍事作戦計画書」を作成し政策策定に介入)を見れば、ROEの見直し案などはすでにでき上がっていると見たほうがいい。

交戦規定は違憲

 自衛隊は軍事用語のほとんどを言い換えごまかしてきた。ROE(Rules of Engagement)とは、一般には「交戦規定」という軍事用語で、いつどんな場合に発砲・攻撃するかを定めた武力行使のルールである。それをあえて「部隊行動基準」と言い換えている。憲法9条は交戦権そのものを明確に否定しており、交戦規定(武力行使ルール)など本来存在する余地はないからだ。

 そのこともあって、自衛隊のROEは曖昧な部分が多かったといわれる。「普通の軍隊」への〝脱皮〟をめざす自衛隊は、まず「領空侵犯での対処基準」、ついでPKO(国連平和維持活動)を口実にROEを整備してきた。

 2005年12月、イラクに派遣された自衛隊員がデモ隊に取り囲まれて投石され、あわや自衛隊が発砲という事件が起きた。これを機に、06年、防衛庁はROEを改定し、自衛隊法第95条の「武器等の防護のための武器の使用」を根拠として、武器の使用を明確に任務とすることを決定したという経緯がある。

 いま政府、そして自衛隊内部で優位に立つ「制服組」=統幕は、内戦状態となって派遣自衛官が戦闘状態に入る可能性が高い南スーダンPKOへの派遣継続を前提に、戦闘になることを見越した部隊編成を着々と進めている。戦争法の下でのROE見直しは、こうした戦闘状態に対応したものになる。これを突破口に、従来の「正当防衛」や「緊急避難」の制限を取り払い、「任務遂行の妨害を排除する」として他国領土での際限のない武器使用へと踏み出そうとしている。

国会内外で追及を

 世界の軍隊の「常識」として、ROEは「敵に手の内を見せるのを防ぐため」として公表されることはまれだ。闇の中に置くことがまかり通る特異な存在となっている。日本でも、情報公開請求してもほとんど黒塗りとなるのが現状だ。さらに、秘密保護法など二重、三重のバリアでいっそう深い闇へと押し込むことが容易に予想される。

 日本国憲法は、こんな軍事優先の「秘密」の存在を許していない。ROEの見直しは、まぎれもなく戦争法の実体化を意味する。情報公開の積極活用をはじめあらゆる手段を使って国会内外での追及が急務だ。違憲の戦争法を実動させない重要な課題である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS