2015年11月20日発行 1404号
【高速増殖炉もんじゅ 運転資格剥奪勧告/核燃サイクル・核武装 葬り去る第一歩】
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福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」について、11月4日、原子力規制委員会は日本原子力研究開発機構が運営主体としての適格性を欠いているとして、原子力機構以外の事業者に運転を移管するよう求める勧告を文部科学省に対して行うことを決めた。新たな事業者を半年以内に見つけることも勧告される。
1兆円のムダ
政府は夢の高速増殖炉≠ニしてもんじゅの実用化に執念を燃やしてきた。ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX燃料)を燃やし、核燃料のプルトニウム239を製造する。資源の少ない日本がエネルギーで自立する有力な手段≠ニ宣伝してきた。
しかし、通常の原子炉よりはるかに高エネルギーとなるため、危険度も原発よりはるかに高い。1985年に本体工事を開始。94年4月に初の臨界に達したが、直後の95年12月、徐々に出力を上げる試験の途中、ナトリウム漏れ事故を起こして停止した。冷却剤として水の代わりにナトリウムを用いるもんじゅのナトリウム漏れは通常の原発の冷却水漏れにあたり、しかも爆発の寸前だった大事故だ。
その後、いったん再稼働が決まったものの、2010年、今度は原子炉容器内に装置を落下させる事故を起こして再び停止。この20年間で1ワットの発電もできなかったいわく付きの施設だ。まともに動いたのは最初の1年半だけ。捨てられた税金の総額は少なくとも1兆円に上る。
嘘と隠蔽
ナトリウム漏れ事故では、原子力機構の前身、動燃(動力炉・核燃料開発事業団)による事故隠しも発覚した。事故当時の模様を撮影したビデオから都合の悪い部分を削除するなどの改ざん・隠蔽を行っていたのである。
嘘と隠蔽で塗り固められたもんじゅと動燃―原子力機構の組織体質は、現在、裁判が行われている元動燃職員・西村成生さん死亡事件とも共通する。もんじゅの過去は暗黒史そのものだ。
福島原発事故後の2012年、もんじゅで1万点を超える施設の点検漏れが発覚。ナトリウム漏れ事故以降、1回も点検されていない施設さえあった。原子力機構は規制委から改善対策の実施を求められるとともに、原子炉等規制法に基づく無期限の運転停止命令を受けた。
国策として進められた核燃料サイクル政策への影響を小さく見せるため、メディアは今回のもんじゅに対する規制委の勧告に「法的拘束力がない」と報道している。だが、文科省と原子力機構が勧告に従わなければ運転停止命令は解除されない。勧告は運転停止命令との同時発動によって法的拘束力を持っている。
1兆円もの血税を注ぎ込みながら20年間1ワットも発電できなかったお荷物施設。引き受ける組織がわずか半年で見つかるわけがない。もんじゅ批判と反原発世論に押された規制委の措置は、もんじゅに対する事実上の廃炉勧告だ。
高速増殖炉は、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場と並んで核燃料サイクルの中核と位置づけられる。MOX燃料は再処理によって作られ、もんじゅでプルトニウムに加工される。核保有国でもないのに現在でも大量のプルトニウム(少なく見積もっても30トン以上。核兵器5千発分)を保有しているのは日本だけで、もんじゅの存在が前提になっている。
核武装の野望
失敗確実のもんじゅに政府が執着してきたのは、核燃料サイクルが核兵器開発能力の保有を意味するからだ。
「核政策についてはNPT(核拡散防止条約)に参加するか否かにかかわらず、当面核兵器を保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル(潜在能力)は常に維持する」。1968年、外務省が極秘に作成した報告書「わが国の外交政策」にこのような記述がある。
核兵器製造能力を持つためには、ウランやプルトニウムを取り出す技術、濃縮・加工する技術が必要となる。プルトニウムを拡大再生産できるもんじゅ、使用済み核燃料からウラン・プルトニウムを抽出する六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場は、核兵器製造能力維持に必要不可欠な施設だ。この野望のため、政府は、もんじゅや六ヶ所村再処理工場がどれほど失敗続きでも撤退しなかったのである。
もんじゅを廃炉にさせ六ヶ所村での再処理を中止に追い込めば、核燃料サイクルは完全に終了する。日本政府の核武装の野望を打ち砕く展望も開ける。もんじゅを契機に反原発の声をさらに強め、全原発廃炉を勝ち取ろう。 |
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