2016年04月01日発行 1422号

【ミリタリー 危険極まりない米軍の対中軍事戦略 日本はアジア軍事支配に「活用」】

 急加速している沖縄・南西諸島における自衛隊増強は、米軍の対中軍事戦略に緊密につながっている。

 この対中国戦略は、今のところ二つの選択肢を持っているとされている。

対中国戦争計画

 一つは、2012年に公表された「エア・シー・バトル(Air Sea Battle)構想」。これは、「空海作戦」(ASB)と呼ばれ、空軍および海軍の軍事力増強および両軍の連携・共同作戦を軸に相手(中国)に対抗して完全に打ち負かす戦争計画である。この構想は、驚くべきことに「中国のミサイル攻撃で在日米軍基地や自衛隊基地は破壊される」ことまで公然と想定し、その後反撃する戦争計画だ。だが、あまりに好戦的なこの戦争計画は米中全面戦争や核戦争になる危険性が極めて高く、米国防総省内でも批判が大きい。

 新たに台頭しているのが「オフショア・バランシング」というもう一つの対中軍事戦略だ。中国経済の深刻なダメージは米国にとっても重大な損失なので、インフラを破壊することなく中国の太平洋への軍事的進出を阻止する。これは、中国に隣接する米国の同盟国に軍事的な役割を求める戦略である。「米国とその同盟国が、琉球、ルソン、韓半島で同時に戦端を開くことができれば、中国の部隊は、第一列島線の内側に閉じ込められること、南北への移動も危険であることを気づくであろう」(「アメリカ流非対称戦争」海上自衛隊幹部学校『海幹校戦略研究』12年5月翻訳論文)とその思惑が語られている。つまり、南西諸島で中国艦船を封じ込め、限定的な効果(戦闘)を狙うものだ。

 この戦略で米軍が自衛隊に要請する役割は、「南西諸島を中国艦船の太平洋の通過を阻止する盾にする」ための自衛隊基地新設と公海上の中国艦船を攻撃できる地対艦ミサイル部隊配備だ。石垣の地対艦ミサイル(SSM)、地対空ミサイル(SAM)部隊配備の他、宮古島(強固な地下ミサイル司令部建設計画もある)や奄美大島にも警備部隊、ミサイル部隊を配備。与那国島への沿岸監視部隊の駐屯地建設など南西諸島で約2千人を新たに配備する。また、ミサイル部隊への中国軍の上陸攻撃を想定して有事即応部隊―新設される水陸機動団(3千人規模)を配備する。進行中の一連の動きは、この戦略に呼応するものとされている。

南西大軍拡狙う日本

 二つの米軍事戦略は、全面的であれ限定的あれ、日本の対中戦争のリスクを確実に高める。米国の覇権維持目的の軍事戦略が「日本の防衛」と何の関係もないことははっきりしている。それを百も承知で、日本政府・防衛省は、この米軍戦略に呼応するとして南西大軍拡・整備を進める。

 その狙いは何か。日本のグローバル資本が自由勝手にもうけを確保するためのアジアの経済的、軍事的支配の確立である。政府・防衛省は、今も日本の軍事大国化への警戒が強いアジアでは、米軍の対中軍事戦略を「活用する」ことが野望への近道と考えているのだ。

 石垣、宮古のミサイル基地建設は第一歩。米国防権限法でも「唯一の選択肢」記述が削除された辺野古新基地建設に安倍が固執するのは、明らかに自衛隊使用のためだ。フィリピンへの軍事援助は、日本がアジアで強大な軍事力を背景に君臨していく足がかりである。

 東アジアの平和と安定を一層遠ざけるこんな日本の軍事大国化計画は直ちに止めさせなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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