2016年04月01日発行 1422号

【うちなーびけん(89)/あなたは何人? 私は「地球市民」】

 先日、地元紙で、ある記事を目にした。昨年12月、県内のある市議会で「国連での『沖縄県民は日本の先住民族』という認識を改め、勧告の撤回を求める」意見書が採択され波紋を広げているとした内容だ。これは、昨年9月に沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が国連人権理事会の場で、政府が強硬に推し進めようとする辺野古新基地建設問題の不条理を国際的に訴えたことを受けて出されたものだ。

 さらに、意見書の中では「先住民の権利を主張すると、全国から沖縄県民は日本人ではないマイノリティーとみなされ、逆に差別を呼ぶ」「私たちは沖縄戦において祖国日本・郷土沖縄を命がけで日本人として守り抜いた先人の思いを決して忘れてはならない。沖縄県民は日本人であり、決して先住民族ではない」と続けている。

 しかし、現実はどうだったか。沖縄戦では捨て石にされ、戦後も米軍基地が居座り続ける不条理な状態を見れば、歴史を無視した恥ずべき内容だ。先住民族を差別するような発言も気になるが、沖縄が国際的な場で訴えざるを得ない状況に追い込んでいるのは誰なのか。まぎれもなく日本政府である。

 沖縄では近年、琉球・沖縄の自己決定権を樹立する会や琉球民族独立総合研究学会などが設立され、自立や独立に向けた議論が高まってきている。政府が沖縄県民の民意を顧みることなく強硬に基地を押し付けようとすればするほど、そうした動きは高まる一方だ。

 もし、日本という国が憲法に基づいて沖縄県民の基本的人権を尊重し、平和主義のもと基地も軍隊もない社会を作り出せたら、日本人で良かった≠ニ感じられるのかもしれないが、民意が無視されているのに日本人で良かった≠ニ素直に喜べるのか? 疑問である。

 翁長県知事が国連で述べた自己決定権という言葉は、沖縄だけに限らず普遍的なもので、同時にこの国の地方自治や民主主義のあり方を問うているものだと感じている。

 ちなみに「あなたは何人?」と問われれば、私は「うちなーんちゅ(沖縄人)」と答えるのがしっくりくるかな。それよりも、平和を求める世界の人びととつながる意味では「地球市民」が一番いい!  (中山すず)

 
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