2016年04月01日発行 1422号

【みる…よむ…サナテレビ392/ 2016年3月19日配信 イラク平和テレビ局in Japan/なぜ強盗事件が多発するのか ―バグダッド市民インタビュー】

 イラクでは強盗事件や誘拐事件が多発している。2016年2月、サナテレビはバグダッドの路上で市民にこの問題についてインタビューを行った。

 インタビュアーのサジャド・アリームさんは、子どもの誘拐や強盗、自動車盗難など、背後関係が分からない犯罪が50件も起こっていると指摘する。

 あるメディア関係者は、犯罪の増加の原因としてまずギャングによる組織的な犯罪を挙げる。最近も「強盗が2つの銀行を襲った」と語る。2003年のイラク侵攻以来の治安崩壊状態は、歴代政権から現在のアバディ政権に至るまで13年たっても改善されていない。

 もう一つの大きな原因は石油価格の暴落による経済状態の悪化である。アバディ政権は石油からの政府収入の減少を口実にして国営企業の賃金未払いを続けている。特に若者は学校を卒業しても就職先が保障されず失業者が多い。その中で若者がこのような犯罪行為に手を染める例が出てきている。

背景に貧困の拡大

 こうした事態について、ある年金生活者は「地味な仕事で収入もわずかであるとしても、人を襲ったり奪い取ったりするより良いことだ」と、若者に正しい道を教育しなければならないと主張する。もちろん、そのためには国が失業問題を解決しなければならない。「国はすべての若者を雇用するだけの大きな能力がある」とはっきり指摘する。

 別の労働者は「この事態の原因は貧困である」と明言する。若者に対して「働きなさい」と語ると共に、イラク社会に対して「連帯と、規律と、モラルが必要だ」と訴える。

 有名な音楽家は、経済的な苦境の中であるからこそ「私たちは協力し合って人びととその財産を守らなければなりません」と主張する。「そのためには共に進む以外の道はない」と言うのである。

 イラクで強盗事件や子どもの誘拐事件が続発している根本には、アバディ政権が進める緊縮政策によって貧困が拡大していることがある。サナテレビはこの状況に対して、治安部隊による取り締まりではなく、市民の共同の力で若者の雇用確保や安全の維持を政府に要求し、社会的に解決しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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