2016年04月08日発行 1423号

【朝鮮の核ミサイル開発 その鼻先で米韓軍事演習/2000万人署名であらゆる戦争挑発を抑え込もう】

 憲法9条改悪を公言する安倍晋三内閣は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の軍事挑発やテロ事件を利用し、戦争法発動を狙っている。戦争法廃止2000万人署名運動のラストスパートの時期、あらためて「戦争するな」の声を強めなければならない。地域の隅々から、軍事挑発はやめろと声を上げよう。

朝鮮の軍事挑発

 安倍首相の改憲発言と時を同じくして、朝鮮政府による核実験、ロケットやミサイル発射が続いている。

 1月の核実験、2月衛星ロケット打ち上げに続き、3月に入ってからは、大陸間弾道弾開発を含むミサイルの発射実験・演習を繰り返している。3日には新型多連装ロケット砲6発、10日、短距離ミサイル「スカッド」2発、18日中距離ミサイル「ノドン」2発、21日にも新型多連装ロケット砲が発射された。ほとんど日本海に向けて発射されており、軍事的威嚇を意図しているのは間違いない。

 15日には、大陸間弾道弾開発には欠かせない大気圏再突入時の弾頭保護技術開発の実験も行ったとされる。それに立ち会った金正恩(キムジョンウン)第1書記は、早期に核弾頭の装着を可能とする多種類のミサイル開発を指示した。24日、衛星打ち上げロケットのように発射まで燃料充填に時間のかかる液体燃料エンジンではなく、いつでも発射が可能な固体燃料エンジンの試験に成功したと報じられた。

 加速する核ミサイル開発は、東アジアの軍事的緊張を激化させ、好戦勢力に軍拡と戦争への絶好の口実を与える許しがたい挑発だ。厳しく批判しなければならない。

米韓軍事演習「斬首作戦」

 軍事挑発は、朝鮮が一方的に繰り返しているわけではない。朝鮮の目と鼻の先で米韓合同軍事演習が3月7日から4月30日まで約2か月にわたり行われている。定例の軍事演習とされるが、今回は過去最大規模だ。韓国軍は例年の1・5倍の29万人、米軍は約2倍、沖縄駐留海兵隊を含む約1・5万人。総勢30万人を超える大部隊が、原子力空母、原子力潜水艦、ステルス戦闘機・爆撃機、空中給油機など最新鋭兵器を使い大演習を行っている。

 それだけで朝鮮政府にとっては十分脅威だ。特に警戒を強めているのは、演習シナリオ「作戦計画5015」に対してである。朝鮮の核ミサイル施設への先制攻撃と米韓特殊部隊による金正恩暗殺―米韓両軍は先制攻撃を堂々と掲げ、「斬首作戦(Decapitation Attack)」とネーミングされた暗殺作戦さえ隠さない。

 「斬首作戦」は演習用の仮想作戦ではない。2003年のイラク戦争でサダム・フセイン大統領は絞首刑にあった。11年リビアの最高指導者カダフィ大佐も銃弾を浴びた。そしてシリアのバッシャール・アサド政権も空爆にさらされている。米軍が各地で実行してきただけに、朝鮮政府に与える衝撃は大きい。

 金正恩は「実戦配備した核弾頭をいつでも打ち上げられるよう、常に準備しなければならない」「『斬首作戦』のような最後の賭けに出ていることから、情勢はもはや傍観できない険悪な状況に至った」と強く反発。核ミサイル開発に拍車をかけた。

 「朝鮮半島有事」はまさに安倍政権が想定する集団的自衛権行使の事例になる。先制攻撃、国家リーダーの暗殺。米韓軍事演習のシナリオは、自衛隊にとっても「日本の安全のため」と理由をつければいつでも実行できるものと考えているに違いない。

日本の軍事挑発「核合憲」

 米韓が核攻撃をも想定した軍事演習を行っている中で、日本の国会で重大な発言があった。3月18日、参院予算員会で横畠裕介内閣法制局長官が民主党議員の質問に、「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用が禁止されているとは考えていない」との見解を表明した。昨年8月、「憲法上、核兵器を保有してはならないということではない」と核武装を合憲とする解釈を示した横畠は、核攻撃まで「合憲」と踏み込んだ。海外での使用について問われた横畠は「必要最小限度を超える」と否定。では国内に限り核兵器が使えるとでも言うのだろうか。

 集団的自衛権行使を合憲と解釈するために安倍が起用した横畠の発言は、まさしく政権の意に沿ったものだ。海外での武器使用合憲の延長線上に、核使用合憲があるのは目に見えている。

 安倍はマスコミを使って朝鮮の軍事挑発を煽りたて、こうした非核三原則をも否定する重大発言を定着させようとしている。朝鮮にとっても、米韓軍事演習同様、日本政府高級官僚による核使用合憲発言は大いなる脅威だ。

軍事緊張利用する「1%」

 米韓軍事演習による朝鮮への威嚇は、朝鮮の核ミサイル開発に口実を与えている。同様に、日本の核武装「合憲」へのシフトは朝鮮だけでなく世界への脅威だ。

 欧州では「イスラム国」(IS)のテロに対する不安・恐怖を利用し、各国政府は移民排除、市民監視、基本的人権侵害を容認させようとしている。イスラエルは占領に抵抗するパレスチナ人に対し、国家的テロを続けている。

 恐怖や軍事的緊張が高まることで失われるのは、民主主義であり、市民間の信頼だ。利益を得るのは、暴力によってしか人びとを支配できない1%を代表する政府だ。人の生き血を利益に換えるグローバル資本、その最も醜悪な部分が、戦争を欲する軍産複合体である。

 あらゆる軍事挑発をやめろ。戦争法を廃止し、憲法9条を守れと要求する2000万人署名を地域の隅々にまで行き渡らせることが、戦争屋の挑発を抑え込む道である。

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