2016年04月08日発行 1423号

【みるよむ(393)2016年3月26日配信 イラク平和テレビ局in Japan 大統領宮殿を売り飛ばすな】

 2016年2月サナテレビは、アバディ政権がサダム・フセイン時代の大統領宮殿を売却しようとしていることについて市民にインタビューした。人びとは国有財産の売り飛ばしに批判の声を上げた。

 現在イラクでは、財政危機への対処策としてサダム・フセイン政権時代に作られた大統領宮殿を売却する話が政治家から出ている。

 イラクの大統領宮殿とはどのようなものか。独裁者だったフセイン元大統領は超豪華な大統領宮殿を8つも作らせた。敷地の合計面積は31・5平方キロメートル(その3分の1は元大統領が作らせた複数の人造湖)に及ぶ。これは東京・山手線の内側の半分弱、大阪環状線の内側とほぼ同じ面積になる。信じがたいほど広大なものだ。

 2003年イラク占領の際に米軍がこれらの宮殿を接収し、豪勢な建物や装飾品、だだっ広い敷地のようすが報道された時には、独裁者の浪費ぶりに驚いたものだ。

 アバディ政権は、すべてイラク国民の財産であるこれらの宮殿を売り飛ばして一部の大金持ちと政治家の私腹を肥やそうとしている。こちらの話にもあきれ返ってしまう。

 インタビューを受けた経済専門家は「イラクの国家財産を売却するのは、すでに様々なやり方で国家の資金を盗み取った連中に巨額の金を与えることを意味する」と、宮殿売却の狙いを分析してみせる。

 市民活動家は「大統領宮殿は国民の財産であり、政治家が売り払うことは認められていません」ときっぱり指摘する。全く当然のことだ。

市民のために活用を

 市民は、大統領宮殿を6千億ディナール(約510億円)から7千億ディナール(約600億円)で売り払おうとしていること、そんなものを買えるのは金持ちや有力政治家だけということを批判する。「大統領宮殿は行楽の施設や博物館にし、市民のために活用するべきだ」と訴える。 

 日本や欧米諸国でも、財政赤字を口実に国有財産や公的企業を売り払って政治家と巨大企業が不正な利益を上げるということが蔓延している。

 グローバル資本と汚職政治家による国家財産の盗み取りに反対しようとのサナテレビの訴えは、私たち自身の問題でもある。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS