2016年04月08日発行 1423号

【「保育園落ちた日本死ね!!!」 安倍「一億総活躍」の大ウソ暴く 保育所民営化ノー、非正規の正規職化を】

  「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログが波紋を呼び、保育所不足―待機児童問題が大きな焦点となっている。ブログは、安倍政権の「一億総活躍社会」の大ウソを暴き、共感を呼んで拡がった。国会で安倍首相が「匿名なので確かめようがない」とはねつけたことが引き金となり、保育制度充実を求める署名は6日間で2万8千人分集まった。マスコミも取り上げ、安倍政権は対応に追われている。

 待機児童問題で問われているものは何か。

公立廃止と民営化が元凶

 2000年までの待機児童の定義は、認可保育所(注)入所申請をして入所できなかった児童のことであった。01年にこの定義が改悪され、認可保育所に入れずとも、自治体が独自に助成する認可外保育施設の利用者は待機児童の対象外とされる。これは、待機児童数を少なく見せるためのごまかしだ。たとえば、川崎市は昨年4月の待機児童数ゼロを誇るが、認可保育所に入れなかった児童は2231人もいた。こちらが実情だ。こうした「隠れ待機児童」数は全国で4万9千人もいる。



 待機児童問題とは認可保育所入所を実現する課題であり、保育の量と質を問う。政府は1995年のエンゼルプランから20年以上にわたって次々と待機児童「対策」を出してきたが、全く解決につながっていない。その原因は、必要な関連予算が確保されず、むしろ公立保育所の廃止と民営化が進められてきたためだ。安倍政権はこの路線をさらに強め、保育における公的責任放棄政策を強行している。

 現在の保育政策は、企業化(無認可保育所増)を推進し保育の質を低めるものだ。昨年4月開始の「子ども・子育て支援制度」の眼目は、自治体の責任などこれまでの保育制度を解体し、個人給付や直接契約方式を導入することにある。措置制度ではなく個人給付制度にすれば保育分野への企業参入を促せる、直接契約方式にすれば保護者の自己責任にすりかえて自治体の公的責任をなくせる、という狙いがある。


賃金格差は深刻

 待機児童解消のためには、公的責任に基づく認可保育所増設が必要なことは明らかだ。

 だが安倍政権は安上がりの策しか出さない。40万人の受け皿づくりに10万人を上乗せするというが、うち45万人分はすでに市町村が整備計画済みであり、実態は5万人分。それも企業主導型保育事業―事業所内保育所の拡大程度で、内容は企業の参入を促すため保育基準切り下げが容認され、災害共済給付制度(学校・保育所管理下のけがなどに医療費等を給付する)の対象にならないと問題だらけだ。自公与党の緊急提言(3/25)も「子どもの一時預かり事業」など急場しのぎで親の深刻なニーズに応えるものではない。

 増設にどれだけの予算が必要か。30万人分の建設費と運営費は約3150億円あればまかなえるとの試算がある。5兆円の軍事費を6%削減すれば捻出できる金額であり、すぐに実行可能なことだ。

 増設と併せて再公営化を進めるべきだ。公的責任を高めることになり、保育士の労働条件を少なくとも公務員レベルに改善することにもなる。

 同時に不可欠なのは保育士の確保である。

 現在、保育現場では非正規職の比率が公立で50%超、私立で40%ほどにも達する。非正規職化が進められ、低賃金と労働条件の悪さが保育士不足を加速している。保育士の平均賃金は月額21万4200円であり、全職種の平均賃金より11万円も低い。正規と非正規の賃金格差は公立、私立とも10万円以上あり、勤続年数を重ねてもなかなか昇給しない実態がある。

 厚労省調査によると、資格保有者が保育士を希望しない理由では「賃金が希望と合わない」が最も多く、「体力不安」「休暇が少ない」が続く。賃金を上げ、正規雇用で働き続けられる環境を整えることで初めて保育の質が維持されていくのである。

社会全体の課題

 歴史的にも保育所建設の要求は闘いであった。古くは1960年代に「ポストの数ほど保育所を」の運動が全国に広がった。今回は待機児童問題が当事者だけでなく社会全体の課題との理解がネットを通じて急速に広がり、安倍政権を追い込んでいる。

 待機児童問題の根本的解決には、認可保育所増設に加え、民営化ではなく再公営化が必要であり、保育士定員増、大幅賃上げとともに非正規職を正規職化しなければならない。これと真逆の政策を進める安倍は倒す以外にない。

(注)認可保育所

 児童福祉法に基づく施設で、国の設置基準(施設の広さ、職員数、給食、防災、衛生管理など)をクリアして都道府県知事に認可された施設

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS