2016年04月08日発行 1423号

【長期無償住宅要求の実現に向けて/福島県の支援策を徹底批判し、新たな施策・予算化要求へ】

 区域外避難者への住宅無償提供があと1年で打ち切られようとしている。これまでは区域内避難者と同様、災害救助法に基づいて提供されてきたが、福島県はその適用をやめると判断した。費用を持つ国(内閣府)も合意した。

 背景には、政府基本方針の「集中復興期間」(5年間、25・5兆円)から「復興・創生期間」(16年度から5年間、6・5兆円に急減)への転換、約7万人の避難者の66%、約4万6千人の避難解除方針がある。避難指示解除で、医療費全額免除・固定資産税減免は打ち切られる。東京電力も1人月10万円の慰謝料支払いを18年3月分で、商工業者への賠償は16年度分で終了させる方針だ。住宅打ち切り問題は、福島県と国、東電が一体で進める「避難者解消」の棄民政策との闘いである。

 国・県との対決点はどこにあるか。福島県が打ち切りを決める昨年6月までは「長期無償提供の継続、災害救助法適用の延長」がポイントだった。現在は、災害救助法に替わる施策として福島県が12月25日に発表した「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」を徹底的に批判し、新たな支援策要求運動を通して長期無償の実現を図ることにある。

これでは路頭に迷う

 福島県の「支援策」は、避難先にとどまろうとする人たちには何の役にも立たない。家賃一部補助は都市相場を無視した月3万円上限で、期間も2年間だけ。敷金など初期費用10万円補助は認めたが、帰還者には支払われる引っ越し費用は、なし。しかも、補助を受けるには都営住宅応募基準と同様の1人月15万8千円以下という所得制限がある。該当者はごく限られる。県が1月に実施した『意向調査』では、県外避難を希望する者の約7割が「(打ち切り後の)住宅がまだ決まっていない」と回答(3/26毎日)。このままでは多くの避難者が路頭に迷う実態が浮き彫りにされた。

 現在の住居を追い出される世帯向けの公的住宅は、雇用促進住宅を東日本の一部だけで検討。UR賃貸住宅の応募基準緩和も家賃から3万円を差し引いた額の4倍の月収が要件で、都市部の避難者にはハードルが高い。「生活再建」とは名ばかりで、帰還者には厚く、とどまる者は切り捨てる弱点をさらけ出した。

 一方、子ども・被災者支援法を所管する復興庁は「福島県が避難先にとどまろうとする者の支援をしないなら、国のスタンスとは違う」「支援法では被災者の意見の反映が定められている」(同庁参事官)と言わざるを得ない。

 しかし、さまざまな避難者団体による政府交渉が行われる中、3月7日のキビタキの会の交渉では、県の支援策に対し「福島県が決めたことにどうこう言えない」とコメントを避け、支援策の問題点や避難者からの強い批判を把握していない実態が明らかになった。問題点を具体的に指摘すればするほど「避難の権利」との矛盾が鮮明になる。「皆さんの意向は引き続き聞く」「今後、何(の施策)もしないということではない」とした復興庁の責任を追及し、新たな施策・予算化につなげていかねばならない。

支援策の抜本的見直しを

 1年後、避難者と「出てくれ」「出られない」の交渉当事者になる受け入れ自治体には焦りがある。2月10日には17都道府県・仙台市などと福島県との間で「避難者受け入れ関係都道府県連絡会議」がもたれている。避難者からの抗議を受け、福島県や東京都の「意向調査」(2月実施)も、目的を「今後の新たな施策のために」とせざるを得なかった。「現在の住居に継続して住まわせよ」の要求を押し込んでいく時だ。

 キビタキの会の交渉で復興庁は、公的住宅の継続使用は「目的外使用として不可能ではない。有償になるだろうが」と答えた。有償の施策が出されても、最終的な家賃負担者が誰かは今後の闘い次第だ。所得制限の撤廃、家賃補助期間2年・上限3万円の見直し、公的住宅への無抽選入居など、被災者の人権擁護の立場から支援策の抜本的見直しを福島県・国・受け入れ自治体に迫らねばならない。

 地方議会への陳情提出の動きもある。東京・練馬区では「福島原発事故による避難者が安心して暮らせる住まいの確保を求める陳情」が3月10日提出され、「空き家住宅と避難者のマッチング、区営住宅の活用、民間やUR、東京都住宅供給公社との連携など、住まいの支援策を講じるよう働きかけを」と訴えた。

 福島県の弱点をたたき、県と国(復興庁)の矛盾を明らかにし、そこに食い込む要求運動を避難者と支援者が共同して築く時である。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS