2016年04月08日発行 1423号

【未来への責任(197)名古屋で強制動員真相究明集会(下)】

 3月5〜6日、名古屋で開かれた第9回強制動員真相究明全国研究集会では「朝鮮人強制労働と世界遺産問題」が討議され、各地から5本の報告が行われた。

*長崎の産業革命遺産を中心に「三菱重工業・三菱鉱業と強制労働」
*「三菱重工長崎造船所強制労働被害者の被爆手帳認定について」
*「戦時下の三井三池炭鉱と外国人労働者」
*「観光スポット、歪められた教育資料として宣伝される『明治日本の産業遺産』八幡製鉄所」
*「釜石と歴史の継承―世界遺産登録問題から考える」

である。

 三菱鉱業には約6万人、重工業に約2万人、そのほか地下工場建設など合わせて約10万人の朝鮮人が強制動員された。世界遺産となった三菱鉱業の高島・端島(軍艦島)では約4千人が強制労働させられ、労災と病気によりおよそ千人が死亡している。

 一方、ドイツの主要企業フォルクスワーゲンは、国の「記憶・責任・未来基金」とは別に「記憶保存の企業文化」を創った。軍需生産と強制労働を記録し社史を編集する、社の敷地に強制労働の記念碑を建立する、「記憶保存資料館」を建設し強制労働の歴史を承継する、などの活動を行っている。日本に必要なのはこういう努力である。

 世界遺産となっている英国リバプールでは、有名な博物館に奴隷貿易が詳しく説明されている。アフリカの文化を紹介したうえで「こういう文化のある人々を奴隷にしたことを忘れない」という反省の展示もされている。また、ドイツにある世界遺産、ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群やフェルクリンゲン製鉄所では、ポーランド、フランス等周辺諸国から多数の人々を連行し強制労働が行われていたことを明らかにしている。

 今回日本が申請した世界遺産登録についてドイツの日刊紙は「日本が世界遺産への登録を推進している近代産業施設の一部で強制労働が行われていたという事実を隠したまま、ユネスコ世界遺産へ登録しようとする日本政府の動きを看過することはできない」と指摘した。

 強制連行の事実を記録、承継するよう求める韓日市民の連帯した訴えは、韓国政府を動かし、昨年7月ドイツ・ボンでの日韓会談で日本政府に「自らの意思に反して厳しい環境で労働を強いられた多くの朝鮮半島出身者がいた」ことを認めさせ、「その犠牲を記憶にとどめるための施設の設立などを検討する」(佐藤・日本ユネスコ代表部大使)ことを約束させた。2017年末までにその内容が検討される。

 世界遺産に登録される八幡製鉄所については、すでに観光資源として北九州市がパンフレットを作成・宣伝しているが、朝鮮人等の強制労働には一切触れていないという。

 日本製鉄(新日鉄)の釜石製鉄所では、朝鮮人・中国人の強制連行が郷土資料館などで具体的に明らかにされ、津波により流された、できたばかりの「戦災資料館」にも多くの労働者・捕虜が亡くなったことが詳しく記されていた。こういう取り組みこそが必要であり、広めていかなければならない。

(グングン裁判の要求実現を支援する会・御園生光治)

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