2016年04月15日発行 1424号

【イラクと日本 ベルギーでの爆弾テロ糾弾 テロ口実の中東空爆直ちにやめよ】

 3月22日、ベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄構内で自爆テロ攻撃があり、三十数人が死亡、約300人が重軽傷を負った。残虐な大量殺人を断じて許してはならない。同時に、事件を利用したイラク、シリアをはじめ中東地域へのグローバル資本主義諸国の軍事介入強化に強く反対しなければならない。

難民作り出す空爆

 テロ組織「イスラム国」(IS)を抑えるとの口実で進められてきた欧米、ロシア、中東諸国などの攻撃によって膨大な被害が出ている。米軍は昨年11月までにイラクとシリアで計8125回の空爆を実施。ロシア軍も毎日140回以上空爆し、11月段階で攻撃回数は4000回を超えた。各国による空爆の総費用は2兆円をはるかに上回る。儲けているのはグローバル資本の武器産業だ。

 軍事介入で最も被害を受けているのは、「イスラム国」よりもむしろ市民である。ブリュッセルの爆弾テロ事件直前の3月18、19日には、ラッカ(「イスラム国」首都とされる)にシリア政府軍またはロシア軍による大規模な空爆が行われ、市民55人(うち子ども13人)が死亡している。シリア、イラクの難民は1500万人を超え、国外に数百万人が逃れている。

空爆担ってきたベルギー

 ブリュッセルには、欧州委員会(EU<欧州連合>の政策執行機関)やNATO(北大西洋条約機構)本部がある。また、ベルギーは2014年秋から米国主導の有志連合による「イスラム国」空爆に参加。F16戦闘機をヨルダンの空軍基地に派遣し、イラクで活動する「イスラム国」に空爆を展開している。総兵力4万人のベルギー軍が対「イスラム国」空爆の5%を担ってきたのである。

 さらに、テロ直後の3月25日、ベルギーのミシェル首相は「現在、イラク領内を空爆している攻撃機を近くシリアにも展開させる可能性がある」と、報復措置として空爆範囲をシリア領内にも広げる意向を表明した。国内でこれほど犠牲者が出たことを口実に、さらに中東への軍事介入を拡大するというのだ。

 事件直後に「イスラム国」が出したとされる犯行声明は、イラク、シリアへの軍事介入を続ける有志連合にベルギーが参加していることをテロの理由としている。しかし、今回のテロ実行犯とされるのはベルギーをはじめ欧州生まれの若者だ。「イスラム国」の直接の犯行かどうかにかかわらず、グローバル資本主義諸国の中東軍事介入と難民に対する非人道的な扱い、中東からの移民を低賃金労働者として搾取し続けてきた差別政策が、事件を引き起こした根本的原因だ。

軍事介入狙う安倍

 安倍政権は「日本と価値を共有するベルギー、EU」と述べ、「海外の邦人の安全確保、国内において警戒警備を徹底」と表明した。こうした事件を利用し、3月29日に施行された戦争法による中東への軍事介入の機会をうかがっている。

 グローバル資本の戦争政策をストップするために、イラク、シリアへの軍事介入即時中止、戦争法廃止の闘いをさらに強めよう。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS