2016年04月15日発行 1424号

【辺野古新基地阻止 米兵女性暴行事件と傲慢な国 全基地撤去しかない】

よき隣人はレイプしない

 もはや、全基地撤去しかない―在日米軍基地の過重負担に日々苦しむ沖縄県民に、そう確信させる事件が起こった。

 3月13日未明、那覇市内のホテルで、キャンプ・シュワブ所属の米海軍一等水兵の男が観光客の日本人女性を自分の部屋に連れ込み、準強姦罪で逮捕された。

 事件後、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、謝罪に訪れたローレンス・ニコルソン四軍調整官とジョエル・エレンライク在沖米総領事に対し、米兵による事件事故が繰り返されることについて、「何十回も何百回も抗議しても一向によくならない、良き隣人というが、それが実行されたためしがない」と強く非難した。

 事件を受け、在日米軍は在沖海兵隊・陸海空軍の全4軍兵士を対象に浦添市の米軍牧港補給地区以南での外泊禁止を発令した。これまでも事件の度に綱紀粛正≠竍再発防止≠ニ叫んでも全くなくならない状況に、県民の怒りは限界を超えている。

 3月21日、名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で行われた「米海軍兵による性暴力を許さない緊急抗議集会」には、わずか5日前の呼びかけにもかかわらず約2500人が参加した。車道には県内各市町村から到着した島ぐるみ会議のバスがずらりと並ぶ。車道を挟んだゲート前と向かいの座り込みテント両脇の歩道は多くの参加者で溢れ、集会開始前から怒りの熱気が高まる。「米兵は基地の外に出すな」「good neighbors don't rape(よき隣人はレイプしない)」など怒りを示す様々なプラカードがゲート内の米兵に向けられる。

 集会では「沖縄の人権にとって最大の脅威は米軍基地」(基地の県内移設に反対する県民会議・中村司共同代表)、「ラインの向こうが基地ではなく、(米兵の)行動の自由で沖縄全体が基地となっている」(女性代表・高里鈴代さん)と発言が続いた。この日、トレーニングウェアで現れた稲嶺進名護市長は、怒りをもって名護市街地から1時間余りかけ走ってきたと語り、「良き隣人ならこんなことが起きるはずがない。今後も基地があるがゆえの事件事故は起きる。新しい基地は造らせない」と強く訴えた。

 集会決議では4項目が挙げられ、これまでにはなかった「すべての米軍は沖縄から撤退すること」が盛り込まれた。さらに、県議会はじめ各市町村議会でも抗議決議や意見書の動きが広まっている。

普天間運用停止は人質か

 辺野古新基地建設をめぐる裁判の和解に基づく沖縄県と国の初協議が3月23日、首相官邸で行われた。県側が米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止の早期実現を求めたのに対し、菅義偉(すがよしひで)官房長官は5年以内運用停止は辺野古移設が前提≠ニし、まるで人質交換のように条件を持ち出した。同じく26日に来沖した中谷元(げん)防衛相も、翁長沖縄県知事との会談で5年以内の運用停止は「辺野古移設が前提」と、これまでの繰返しに終始した。しかし、仲井真前知事と政府との間で運用停止を約束した際、辺野古は前提≠ニされておらず、翁長知事は「前提と確認された記録はない」と反発している。

 さらに、31日に行われた安倍晋三首相とオバマ米大統領の日米首脳会談で、安倍首相は和解に応じた理由を「急がば回れとの考え」と述べ、「辺野古移設が唯一は不変」と強調した。これに対し、翁長知事は「円満解決を示した和解条項の趣旨にもとり和解の精神を軽んじており、大変遺憾だ」と非難した。

狙い撃ちの不当逮捕

 シュワブゲート前座り込み現場には、工事中止によって束の間の安堵感が広がる。ところが4月1日午前9時20分ごろ、カヌーで海上抗議行動をしていた芥川賞作家の目取真(めどるま)俊さんが、辺野古沖からフロート(浮具)を越えて立ち入り制限区域に許可なく入ったとして刑事特別法違反容疑で逮捕された。米海兵隊の軍警備員が約8時間もの長時間に渡って拘束。中城(なかぐすく)海上保安部が身柄引き渡しを受け、午後5時22分に緊急逮捕したが、2日午後7時過ぎ釈放した。

 現在工事がストップされている中で臨時制限区域は意味をなさず、入ったところで実害は何もない。むしろ工事中止後もフロート撤去や制限区域を解除せずに放置したままの国の方が問題だ。いつも通行している場所での突然の拘束と、社会的影響力のある目取真さんを狙った今回の不当逮捕に、市民らはさらに怒りを募らせている。

 米軍普天間飛行場返還合意から20年の4月12日、那覇市の県民広場でオール沖縄会議が県内移設断念の集会を開く。今、不当かつ苛酷な負担が続く現状に、県民は全基地撤去を求める動きに舵を切ろうとしている。     (A)

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