2016年04月22日発行 1425号

【安倍改憲を阻む野党共闘/市民が政治を動かすこれが民主主義だ=z

 安倍政権の戦争法発動、9条改憲策動にストップをかけられるかどうか。衆院補選の投開票(4月24日)が迫り、野党共闘に期待がかかる。民意とは大きくかけ離れた議席を占有する自民党。改憲発議のできる両院議員3分の2以上の議席を狙い野党分断をはかる中で、政党間の駆け引きを乗り越える市民の運動―主権者が政治を動かす意義は大きい。戦争法廃止、9条改憲阻止へ。野党共闘への市民の行動が問われている。

接戦北海道5区

 参院選に先行する2つの衆院補欠選挙は今後の野党共闘前進に重要な意味を持つ。

 京都3区。京都市伏見区と近接2市1町、有権者数35万人弱。自民党の不倫議員辞職にともなう補選。勝目なしと見た自民党は候補者擁立を見送り不戦敗。ただ、改憲補完勢力である「おおさか維新の会」が候補者を出した。民進、共産両党の支持票を合わせれば数字上は勝てる。だが民進党は他の野党とは共闘しても共産党とはできないとの姿勢を崩していない。野党共闘が困難となる典型だ。民進党京都府連会長でもある民進党予定候補に対し共闘を求める市民の声は多い。共産党が独自候補を取り下げ、事実上の「統一候補」となっている。

 北海道5区では野党共闘が成立した。札幌市厚別区と近接する5市1町1村で有権者45万人強。外務大臣や官房長官など閣僚経験のある自民党町村信孝の死亡(15年6月)に伴う補欠選挙。直近3回の選挙で勝利してきた町村の「弔い合戦」として、京都を捨て新党大地を取り込んで全力投入の自民党は、当初圧勝確実ともくろんでいた。しかし、民進・共産の選挙協力が実現して激しく追い上げ、メディアも接戦と伝え始めた。

 野党統一候補実現の原動力は「戦争をさせない北海道をつくる市民の会」だった。戦争法強行「可決」に危機感を持った上田文雄弁護士(前札幌市長)らが呼びかけ、15年11月に設立、野党共闘を訴えた。すでに公認候補を立てていた共産党と、保守系労組票の離反を恐れ共産党と距離を置きたい民主党(当時)との間の調整は難航。野党共闘統一の予定候補が決まったのは今年2月。政党の動きは重い。選挙戦は地域での集会を重ねる市民グループが中心となっている。市民が政治を動かす。この訴えが無党派層へ浸透すれば、野党共闘の勝利は確かなものになる。

改憲阻止、戦争法廃止へ

 今夏の参議院選挙は改選議席121議席。うち改選1人の選挙区が32。毎日新聞(4/3)によれば、野党共闘の合意が成立したのは15選挙区。協議中10、難航7となっている。難航区にあげられた愛媛で、候補者の一本化へ前進との報道もあるように、野党共闘実現への動きは明らかに加速している。



 あらゆる「障害」を乗り越え、共闘を実現しなければならない。「在任中に9条改憲」と言う安倍の決意は変わっていないからだ。

 現在衆議院では、自民・公明両党で325議席を有し、改憲発議に必要な国会議員の3分の2(317議席)を超える。参議院では、自公におおさか維新など改憲勢力を加えても151議席であり、3分の2(162議席)を得るためには、安倍総裁在任中最後の参院選となる今回、11議席の上積みを狙う。

 改憲を阻止するには、まずこの参院1人区で自民党議員を落選させなければならない。10年の改選時1人区は29。自民21、民主8だった。13年選挙では31選挙区中29を自民がとた。だが自民党が得票率5割を超えた選挙区は多くない。野党統一候補となれば勝てる。

 民意とかけ離れた政治がまかり通る大きな要因に選挙制度の問題がある。最大の問題は、大量の死票が生まれる小選挙区制だ。14年衆院選の小選挙区では、自民党は有権者4人に1人の得票で4分の3の議席を手に入れた。安倍は二言目には「国民の審判を受けた」と述べ、悪政を正当化している。有権者は自民党に白紙委任したわけではない。小選挙区である参院1人区での野党共闘は、欠陥選挙制度の中で民意を反映させる手段となる。

市民の後押しが必要

 政策破綻で行き詰る安倍政権。それに加え、自民党議員の暴言、不祥事が相次ぎ、マイナス要因には事欠かない。切り札≠ニする「消費税増税延期」も下心が見え透いている。安倍が期待するのは野党分断、選挙争点隠しの効果だろう。

 消費税増税に対し、野党の政策は一致していない。だが、今日の経済悪化の下であえて増税強行を主張するものはいない。今夏の参院選は、生活破壊のストップとともに、戦争法廃止、改憲阻止を争う選挙である。

 戦争法を廃止し、戦争放棄の憲法9条を守りたい。原発再稼働、沖縄新基地、貧困格差拡大、保育・福祉切り捨て、とにかく安倍暴走を止めたい。市民は、そのために野党共闘を求めている。

 北海道5区では護憲や脱原発の運動を続けてきた30団体以上の支持が集まっているという。候補者は「安保法廃止を願う市民運動を受けて擁立された無所属候補。政党の推薦は後から。野合批判は当たらない」と発言している。

 「市民連合」「ミナセン(みんなで選挙)」、学者、学生、ママの会など戦争法反対や原発反対の市民運動が全国各地で政党間の協力を促している。地域のすみずみから寄せられた戦争法廃止2000万人署名が市民の声だ。

 安倍政権の最も恐れるのは、野党共闘であり、その成立に力を発揮している市民運動の存在だ。1%の利益を代表するものは、99%の声に恐れをなす。市民が政治を動かす。これが民主主義実現の一つの姿だ。新自由主義による社会のひずみを民衆の手でただす。安倍政権ストップへ総がかりの行動を起こそう。

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