2016年04月22日発行 1425号

【民意無視の安倍戦争法施行】

 3月29日、戦争法施行が強行された。前後して、核攻撃まで可能とする内閣答弁書決定、民間フェリーの戦時動員準備と戦争する国づくりの加速が続く。戦争法廃止の声を一層強めなければならない。

強まる好戦性/「核武装・核使用も合憲」

 4月1日、安倍内閣は「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない」とする答弁書を閣議決定した。

 「我が国には自衛権があり、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは第9条2項によって禁じられているわけではない。核兵器であっても、そのような限度にとどまるものの保有は禁止されておらず、使用についても妥当する」というのである。その上で「非核三原則により、政策上の方針として一切の核兵器を保有しない」と述べている。先立つ横畠(よこばたけ)内閣法制局長官の「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用が禁止されているとは考えていない」(3/18)との国会答弁を内閣として確定した。

 これまでも「核兵器保持は合憲」と述べた閣僚や法制局長官はいた。だが、今回の意味合いは異なる。

 「非核三原則(核兵器を作らず、持たず、持ち込ませず)」は政策であり、安倍にとっては憲法解釈以上に軽い。すでにこれまでの政策「武器輸出三原則」を廃止した。いつ「非核三原則」を廃止しても不思議ではない。

 安倍内閣は、集団的自衛権行使容認を閣議決定し、実際に行使できるよう戦争法を強行した。「存立危機事態」なるものをでっち上げ「自衛」の範囲を際限なく広げた。その結果、時の内閣の判断で「自衛のための必要最小限度の実力」は同盟国の武力紛争でも行使できるとした。日本が攻撃されていない段階で同盟国の交戦相手を攻撃するのは、相手国への先制攻撃だ。核兵器も「必要最小限度の実力」に含まれるのなら、核先制攻撃すら可能ということだ。

 3月の横畠答弁について菅(すが)内閣官房長官は「過去の国会答弁を踏まえて答弁したと報告を受けている」と開き直る。だが、戦争法以前の「過去の答弁」と以後の「閣議決定」では、その危険性は天地ほども差がある。

加速する戦争準備/民間人戦争動員狙う

 戦争法施行直前の3月15日、防衛省は、民間フェリー会社「高速マリン・トランスポート株式会社」と、2025年末まで高速フェリーを長期借り上げする契約を結んだ。同社は「平時」には貨物運搬などの収益事業を行い、「有事」に自衛隊に武器・弾薬運搬業務を提供するために作られた「特定目的会社」だ。

 また、海上自衛隊は2016年度から予備自衛官補制度を導入する。予備自衛官は退職した自衛官が戦時に召集されるものだが、予備自衛官補は自衛隊員の経験がなくても一定の訓練を受けることで予備自衛官同様召集を受ける。

 同社の船員を予備自衛官補にすれば、民間による戦争協力のさきがけとなる。

 戦争法制は、合計21本の新法・改悪法からなる。一方、戦争関連法のうち「国民保護法」はその中に入っていない。強制に反発する世論を意識したのだろう。安倍は読み替えで発動可能と考えている。

国の命令で軍事に従事

 国民保護法は、小泉政権時に「武力攻撃事態法」とともに制定された。「日本が他国からの武力攻撃にさらされたとき、その蓋(がい)然性が高いとき」などに発動されるものだ。政府は事態対処のための基本方針を定め、地方自治体、指定公共機関は協力の義務を負うとされる。

 国は、自治体に指示を出し、従わなければ代執行もできる。指定公共機関には、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、放送事業者、各高速道路会社、JR各社、日本郵便、NTT、電気事業者、ガス事業者、海運業者、陸運業者、航空会社、鉄道事業者が指定されており、政府は業務従事命令を下すことも可能だ。これらの企業・団体、その下請け事業者で働く人たちは、業務として戦争体制に組み込まれる。

 戦争法で武力攻撃事態法発動要件に「存立危機事態」=集団的自衛権行使が加わった。武力攻撃事態法とリンクする国民保護法によって、業務命令で国民を先制攻撃に動員することを狙っているのである。

 高速フェリー借り上げ契約と予備自衛官補制度は、その水先案内人≠ニなる。

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