2016年04月29日発行 1426号

【TPP協定承認・関連法案審議/許されぬ黒塗り資料、秘密外交/闘いで批准阻止、廃案へ】

 今国会最大の争点の一つであるTPP(環太平洋経済連携協定)批准承認と国内関連法案の審議が、衆院TPP特別委員会で始まった。だが、安倍政権のでたらめな情報隠しにより国会審議は冒頭からストップした。運動と反対世論の拡大で強行阻止は可能だ。

説明会なく情報隠し

 安倍政権が国会に提出したTPP交渉経過についての資料は、驚くことに全ページ黒塗りだった。経過の公表を求める野党側に、安倍晋三首相、石原伸晃TPP担当相は「外交は結果がすべて」だと発言、公表を拒否した。交渉経過を公表すれば「相手国との信頼関係を損ねる」。米国との信頼関係≠フ名で、主権者国民とその代表である国会に対し、経過ばかりか何が秘密かまで一切を隠す秘密外交など、許されるわけがない。

 そもそも、TPP会合に出席し、実際に交渉に当たってきたのは甘利明・前TPP担当相だ。UR(都市再生機構)をめぐる「口利き」事件が報道されて以来、甘利は担当相を辞任し「入院」。その後も逃げ回っている。交渉当事者が不在のまま審議などできるわけがない。

 「STOP!TPP市民アクション」などの行動を続けてきたPARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子事務局長は「どこの国も国民に協定内容を説明し、ヒアリングやパブリックコメントなどを行っている。すでに批准を決めたマレーシア以外の国は審議・採決は夏以降。協定文の公表・署名以降も国民向け説明会がない」と、安倍政権の情報隠し、秘密外交を批判する。

 憲法は、日本が締結した国際条約は遵守するよう求めているが、憲法の基本原則である民主主義は国民の知る権利が保障されなければ実現できない。にもかかわらず安倍政権が「黒塗り資料」でごまかして審議を急ぐのは、TPPが国民主権を踏みにじり、グローバル資本を野放しにする内容だからだ。

 TPPは、農業も国民皆保険制度を通じた医療制度も破壊する。ISD(企業対国家の紛争解決)条項は、国民の安全や健康を守るための規制さえ無効化する。グローバル資本だけを保護し、徹底的に新自由主義を進める内容だ。


訴訟で批准阻止訴え

 4月11日、東京地裁で行われたTPP違憲訴訟の第4回口頭弁論で、TPP反対派で知られる鈴木宣弘東京大学大学院教授は「国内対策があるから農林水産業への影響が小さく済むという政府の主張はおかしい」と陳述。協定発効7年後の再交渉規定では、聖域が守られた「重要5品目」(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)も関税撤廃を迫られ、日本の食料生産が維持できなくなるおそれがあると指摘した。

 原告である「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」からは政府調達や著作権に関わる意見陳述もあった。TPP発効後は「政府調達」(外国企業も含めた一般競争入札の強制化)の全面的拡大が狙われ、地方の隅々まで外国企業を含めたグローバル資本に食い荒らされる。遺伝子組み換え食品で知られるモンサント社などの悪徳企業による農村支配によって、世界中の市民が健康被害を押しつけられる。

広がる市民の闘い

 国内ではすでにTPP後をにらんだ「国内対策」と称し、TPP実体化につながる議論が進む。牛乳・乳製品をめぐる「指定団体制度」(農協などの指定団体が酪農家からまとめて牛乳を集荷する制度)の廃止の提言もそのひとつだ。牛乳・乳製品の「流通自由化」が何をもたらすかは、食糧管理制度廃止後、米価下落に苦しむコメ農家を見れば明らかだ。提言した規制改革会議「農業ワーキンググループ」には、本間正義東大教授など新自由主義派が並ぶ。

 しかし、TPP協定批准阻止、関連法案廃案を求める市民の闘いも続いている。「TPPを批准させない3・30国会行動」には600人が参加した。「STOP!TPP市民アクション」が4月13日に行った緊急行動にも200人が集結。政府が提出した黒塗り資料を手に「情報を隠すな」などと声を上げた。福島県南相馬市出身の男性は「故郷は原発事故とTPP不安で過疎化が一気に進んだ。政府は農村の苦労が見えていない」と政府を批判した。今後、毎週水曜日に行動を組む。

 世界の99%の民衆の生活を破壊し、1%のグローバル資本の利益を最大化するTPP。協定案は批准阻止、関連法案は廃案しかない。

 
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