2016年06月03日発行 1430号

【沖縄 米軍属の女性殺害 基地ある限り繰り返される犠牲 県民の心は全基地撤去へ】

 3月4日の日本政府と沖縄県和解合意で辺野古新基地建設工事がストップして2か月半。5月20日には、大浦湾のほとんどのオイルフェンス(油防止膜)やフロート(浮具)が撤去され、大型スパット台船も姿を消した。しかし、臨時制限区域を示すブイ浮標灯と海底の数十個の40トンコンクリート・ブロックは放置されたままだ。政府は辺野古新基地を決して諦めていない。

翁長訪米で大きな成果

 翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は5月9〜19日、2度目の訪米要請を行った。今回は、1996年普天間飛行場の全面返還を合意したモンデール元駐日大使をはじめ、米連邦議会上下両院議員4氏と面談。新基地建設が和解でストップしている事実を伝えると、「日本政府が辺野古移設を変更すれば尊重する」など辺野古が唯一の解決策ではないことに初めて言及するところまできた。

 訪米のもう一つの目的は、10月沖縄全島で開催される「第6回世界のウチナーンチュ(沖縄人)大会」への参加を呼びかける北米キャラバン隊≠ナハワイなど米国とカナダの4都市を周ることだ。5月11日、ロサンゼルスの大リーグ・ドジャースの試合で翁長知事は始球式に登場。琉球國祭り太鼓が演舞を披露し、北米県人会約140人が観戦、声援が上がった。知事の始球式は球団側からの提案だ。

またも基地あるが故の犠牲

 5月19日、沖縄県中部・うるま市の女性(20歳)死体遺棄容疑で元海兵隊員が逮捕された。米国籍の軍属男性は強姦し殺害と自供も始めた。またしても米軍関係者によって沖縄の女性が犠牲となる悲しく痛ましい事件が発生した。

 72年日本復帰から昨年までに県内で発生した米軍関係者による犯罪は5896件、うち凶悪犯罪は574件に及ぶ。52年サンフランシスコ講和条約発効から2010年までの交通事故を含む米軍関係者による事件・事故は21万件を超え、1088人が命を奪われた。日本政府は在日米軍駐留の必要性を「国民の安心・安全のための抑止力」とするが、これほど多くの県民の安心・安全が脅かされているのだ。



 こうした事件のたびに日米両政府は「極めて遺憾」と表明し、綱紀粛正と再犯防止策の徹底を約束する。だが、事件がなくなることは決してなかった。それは軍隊と基地が人を殺すための訓練場所であり、入隊した民間人を殺人マシーン≠フ米軍兵士に変貌させる暴力による洗脳教育をしているからだ。そのことはIVAW(反戦イラク帰還兵の会)の多くの元兵士が証言している。米軍基地が存在するかぎり凶悪犯罪は発生する。基地を撤去・返還すること以外に凶悪犯罪を根絶することは極めて困難だ。

沖縄は直ちに声上げる

 訪米で大きな成果をあげ帰国した翁長知事を待ち受けていたのは、女性殺害事件の知らせだった。知事は「連邦議会議員、有識者らに沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているかと話してきた。その矢先に、基地があるが故(ゆえ)の事件が起きてしまった」と沈痛な表情で語った。

 繰り返される米軍関係者の凶悪犯罪に、沖縄は直ちに声を上げた。事件が判明した翌5月20日早朝、容疑者が勤務する米軍嘉手納基地ゲート前で緊急抗議集会が開催された。午後には「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代共同代表)など県内の女性16団体が県庁で緊急記者会見。被害女性と同世代のSEALDs RYUKYUの玉城愛さんは、何度も言葉を詰まらせながら「実現したい夢もあっただろう。恐怖と怒り、悲しみは言葉にできない」と絞り出すように語った。

6・19県民大会へ

 怒りは再び頂点に達した。22日午後、北中城村石平(きたなかぐすくそん いしんだ)のキャンプ・フォスター在沖米軍司令部ゲート前で、「元米海兵隊兵士の事件被害者を追悼し、米軍の撤退を求める緊急集会」が行われた。2千人の参加者は黒や白の服に身を包み、追悼を表した横断幕、「命を返せ」「すべての基地・軍隊の撤退を」のプラカードを掲げて静かに強い憤りを込めた抗議行動を行った。

 23日、翁長知事は官邸を訪れ安倍首相に厳しく抗議し、来日するオバマ大統領との直接会談を求めた。

 さらに「オール沖縄会議」は、1995年少女暴行事件での県民総決起大会と同規模の抗議県民大会を6月19日に開催することを決めた。

 6月5日の沖縄県議会選挙、7月参議院選挙で、沖縄県民は改めて日米両政府に対して米軍基地を置き続けることへの怒りの審判を突きつける。県民の心は、ついに「全基地撤去」へと決意を固めた。

     (5月23日、N)



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