2016年06月03日発行 1430号

【DVD紹介/学生たちはいま、声をあげる/今こそ給付型奨学金の実現を/マブイ・シネコープ編/DVD/35分/1,000円】

 「意識の陥穽(かんせい)(落とし穴)」という言葉がある。あまりに当たり前すぎて疑いもしない落とし穴。

 今年になって、それをまざまざと突きつけられた。「奨学金」という「美しい」精神に発した制度。でも、もしこれがあくどい儲け主義に貫かれた制度だったら、誰しも「ひどい」と訴えるだろう。

 「貧困の連鎖」という言葉は、非正規労働者2千万人の現実の中で全国に知れわたっている。アルバイト抜きで学生生活が送れない現実も皆が知っていることだ。しかし、学費高額化の中で、ブラックバイトで何とか学費を工面し、卒業後は仕事もないのに奨学金の返済が迫ってきたらどうなるだろうか。

 ようやくこの貧困の連鎖が学生たちを追い込んでいる現実が社会的に浮かび上がってきた。「こんなにもひどいとは…」という驚きの一方、「借りたものは返すのが当たり前」という、現実のシステムを抜きにした「常識論」が大手をふってまかりとおる。

 一つの実例。クビを切られて収入はゼロ。争議の方は和解で解決した。だが、「まだ借金があるんですよ」。考えてみれば、争議中に延滞金(納付期限までに完納しない場合に課せられる徴収金)の返済が進むわけがない。しごく当たり前のことだ。もう一つのよくある実例。仕事が見つかって月約7千円ずつ5か月返済した。少しは減ったかと確認してみると借りた元本は1円も減っていない。納入金は実は延滞金から充当され、元本は減っていかないのだ。満額返済していない以上、延滞金はどこまでもつきまとってくる。

 「奨学金」「学生支援機構」と銘打ちながらこんな制度をまかりとおらせているのは、OECD(経済開発協力機構)加入の「先進国」中、日本だけなのだ。世界の常識は、給付制にとっくに向かっている。

 これほど腹が立ったのは、今日まで「日本学生支援機構」という国家版ブラックローンに無知同然できてしまったからだ。しかし、学生や親たちは立ち上がっている。昨秋から半年で300万を超える署名を突きつけ、野党5党を動かし、どの党も奨学金制度の改善を掲げるに至った。

 この学習DVDは、4月に開かれた全国奨学金問題対策会議の全国総会の要点をまとめながら、安倍の恥ずべき「一億総活躍社会」への怒りをぶつけている。奨学金というけれど、今は弱いものを狙うサラ金同然となっている。そうした認識を全国に、緊急に広げてほしいと切に願っている。

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≪問い合わせ先≫
マブイ・シネコープ
◆TEL 06-6786-6485 ◆E-Mail:mabui1101@nifty.com ◆URL:http://homepage2.nifty.com/cine-mabui/

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