2016年06月10日発行 1431号

【オバマ-安倍広島訪問 核軍縮の妨害隠す政治ショー】

海兵隊・海自激励が先

 「1%」のための伊勢志摩サミットが閉幕した5月27日午後、オバマ米大統領は専用機エアフォースワンで米海兵隊岩国基地に乗りつけ、海兵隊員と海上自衛隊員を前に演説した。「皆さんのここでの任務は、日本と米国が共有する自由、民主主義、人権、法の支配といった価値観に根づくものだ。日米の同盟は、両国にとって欠かせないだけでなく、世界に安定と繁栄をもたらす基盤にもなっている」

 イラク戦争をはじめ数々の国際法違反の侵略戦争に蓋(ふた)をしたまま「法の支配」を説き、国内では罪のないアフリカ系少年を警官が射殺する事件が跡をたたない深刻なレイシズムの広がりを無視して「人権」を語る。まやかしのレトリックによって日米軍事同盟の強化をうたう。

 侵略への任務に邁進する兵士らを激励したその足で、オバマは専用ヘリに乗り込み、岩国基地に駐留するMV22オスプレイに先導させて西広島空港に降り立った。参院選への点数稼ぎを狙う安倍首相共演で演出された壮大な政治ショーの始まりである。

加害責任認めない米日

 平和公園でのスピーチも欺瞞(ぎまん)に満ちたものだった。「71年前、晴天の朝、空から死が降ってきて世界が変わりました」。原爆投下という国際法違反の戦争犯罪(人道に対する罪)を、あたかも突然天から降ってわいた自然災害であるかのように、全くの他人事として語り始めた17分間の冗長な演説。戦争犯罪を犯した国の指導者として、原爆投下のその瞬間に惨殺された広島・長崎の20万にも及ぶ無辜(むこ)の民への一片の謝罪の言葉もない。謝罪なき演説に、同じく加害責任を拒む安倍が安堵したことはいうまでもない。

 オバマ演説は「広島と長崎は、核戦争の夜明けではなく、私たちの道義的な目覚めの始まりであるべきです」と空疎な説教で締めくくられた。

 だが、同義的に目覚めていないのは、一体誰なのか。

 今、世界の非核保有国が共同してイニシアチブを発揮し、国連の核軍縮作業部会等で核兵器使用の法的禁止(核兵器禁止条約の締結)へ向けて大きな流れができつつある。その会合にことごとく欠席し、議論の進展を妨害している米国政府。一方、議論が核保有国と非核保有国を分断するとの詭弁を弄して条約締結に反対し、「核の傘」の下で軍事同盟強化・戦争法制の推進を図り、47トンものプルトニウムを溜め込んで潜在的核保有―核武装をも狙う日本政府。

 まさに核廃絶の妨害者である両者によるおぞましい政治ショーであった。

核兵器近代化に1兆ドル

 米国は、ロシアとの新START(新戦略兵器削減条約)で配備済の核弾頭を1481個まで減らしたが、削減した核弾頭は即廃棄されるわけではない。大陸間弾道ミサイル、戦略原潜、戦略爆撃機のどれにも相互使用できるよう「再設計」が進められている。さらに小型核弾頭装備の巡航ミサイル開発を含め「核兵器近代化」のために今後30年間で1兆ドル(約110兆円)の予算を注ぎ込む計画だ。

 被爆地広島訪問を隠れ蓑にして進められる核軍拡と憲法破壊の戦争法・日米軍事同盟強化を許してはならない。

 (全交広島・日南田成志)

 
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