2016年06月10日発行 1431号

【加速する自衛隊の作戦活動/世界の軍縮の流れをアジアに】

 中国を照準に南シナ海で一気に加速する自衛隊の「作戦活動」。1426号で紹介した自衛隊艦船の動きに加えて、新たな「作戦活動」が明らかになった。

 日本とフィリピンの「防衛協力」として、海上自衛隊の「中古の練習用航空機」がフィリピン海軍に貸与される。武器輸出を解禁した「防衛装備移転三原則」にもとづくという。貸与される海自の練習機TC90は、フィリピン軍機に比べ航続距離が倍近い1870キロ。南沙諸島の大部分をカバーできる高性能の軍用機で、将来、レーダーを搭載すれば偵察も可能になる。

 フィリピンやベトナムの軍事能力を高め、自衛隊主導で中国と対峙する。こんな軍事挑発合戦が武力衝突の危険性を高めている。

顕著な欧州軍縮の流れ

 危険除去は軍縮とアジア集団安保の追求以外にない。

 一見、混乱と戦争が支配するかに見える世界も軍縮が趨勢だ。特に、ヨーロッパで軍縮の流れが顕著だ。

 『ミリタリー・バランス2015年版』(英国のシンクタンク国際戦略研究所の軍事情勢報告書)は、1991年(冷戦の影響が残る時代)と2014年(EUが定着)を比較し、EU主要国イギリス、フランス、ドイツで総兵員数、陸海空軍力(装備)のすべてで3分の1から半減へと大きな変化を明らかにした(表)。

 これは、1970年代から紆余曲折を経ながらも、軍拡競争と破滅的な戦争の危機からの脱却、統一した平和的な地域への転換が一貫して追求されてきた軍縮交渉の結実した姿である。具体的な軍縮交渉は、米ソの核兵器相互的削減合意、欧州安全保障協力会議(CSCE)での政治的・経済的協議、中部欧州相互兵力軍備削減交渉(MBFR)によるヨーロッパでの兵力削減が挙げられる。CSCEとMBFRは、今日のEU統合と欧州軍縮の礎となっている。

東アジアの軍事支出増

 アジアの現状はどうか。

 近年東アジアでの軍事支出の増加の勢いが止まらない。この現状は、1970年代や80年代のヨーロッパの軍備増強に匹敵する。『ミリタリー・バランス2016年版』によれば、中国の軍事支出は世界第2位、ロシアが第4位、日本第8位、韓国第10位、オーストラリア第13位。ベトナム、フィリピンなど東アジアのほとんどの国が軍事支出を増大させている。日本とロシアが順位を下げたが、円安、ルーブル安によってドル建て支出額が減少したもので、実際には5兆円初突破の日本のように軍備増強が実態だ。

 だが、この厳しい現状にもかかわらず、東アジアの軍縮のための枠組みはすでに存在している。中国、米国、ロシアが参加する6者協議はその一つだ。朝鮮への対応に終始せず、東アジアにおける核兵器の削減、通常兵器の大幅な削減を協議する場として発展させなければならない。また、アジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP)のような、中国、アメリカを含めたアジア太平洋のほとんどの国の研究所をメンバーとする国際機関もある。

 さらに、ASEAN(東南アジア諸国連合)を軸に「東アジア共同体」をめざす動きも加速している。日本政府に要求すべき平和外交とは、こうしたアジアの軍縮の枠組みに積極的に参加し、リーダーシップを発揮することであり、率先して軍備縮小することだ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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