2016年06月10日発行 1431号

【未来への責任(201)戦争法下のヤスクニ・キャンドル】

 違憲の戦争法が成立した下で初めてとなる「平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動」が8月13日、東京で行われる。11回目の今年のテーマは「戦争法の時代と東アジア―『戦死者』とヤスクニ」である。

 戦争法で、自衛隊には人を殺し殺される条件が生まれた。自衛隊が海外で武力行使することは、緊張する東アジア情勢に重大な影響を及ぼす。また、「戦死者」の追悼、顕彰が問題となってくる。キャンドル行動のシンポジウムでは、日本・沖縄・韓国・台湾の4地域からパネリストを招請し、「戦争法の時代」が東アジア全体に何をもたらすのかを明らかにしようと準備が進んでいる。

 4月15日に事前学習会の第1回、5月13日には第2回が行われた。1回目は、『経済的徴兵制』の著者である布施祐仁さんを講師に迎え、テーマは「戦争法発動と自衛隊員に迫る『戦地派遣』の危機」。興味深かったのは、陸上自衛隊の文書「イラク復興支援活動行動史」が「1発の銃弾発射で部隊が全滅することもある」としていることである。イラク・サマワでの一触即発の危険な状況の映像も見ることができた。

 現代の戦争では「前線」も「後方」も区別がつかない。実際、イラクでも秘密裏に至近距離射撃、近接戦闘、制圧射撃など戦闘に備えた訓練を行っていた。現地はそう甘くないのである。南スーダンへの派兵はさらに危険が大きい。

 自衛隊では、隊員に「遺書」を書かせる「服務指導」が行われ、幹部学校で特攻の発進基地「知覧」研修が実施されている。うたわれているのは「死生観および愛国心の涵養(かんよう)」。「不測の事態」のための「家族の意識改革(いざというときのための覚悟)」も求めているのである。

 2回目は、大阪大学の木戸衛一さんに「ドイツの軍事化―歯止めとしての軍事オンブズマン制度?」と題し、日本に先んじて海外派兵を行っているドイツの状況を報告してもらった。EU(欧州連合)域内派兵から、さらにアフガニスタン派兵へと拡大し、現在9か国・地域に約3400人を派兵しているドイツ。アフガン帰還兵を中心にPTSD(心的外傷後ストレス障害)被害も深刻である。

 「軍事オンブズマン制度」は聞きなれない言葉だが、自衛隊の状況と併せて考えさせられた。ナチス・ドイツの反省から導入されたもので、連邦議会により任命され、軍人の基本権の保護を中心に軍の監視活動を行う機関だ。事前予告なく軍の施設や部隊に立ち入り、調査する権限をも有している。年1回の報告が義務付けられており、連邦議会のホームページを通じて誰でも見ることができる仕組みになっている。軍隊を一定程度規制する力はあるだろうが、やはり派兵そのものを中止に追い込んでいくことをまず考えなければならないと思った。

 ヤスクニ・キャンドル行動の前に7月、参議院選挙が行われる。安倍を追い込み、派兵させない運動とともに東アジアの民衆によるヤスクニ・キャンドル行動を成功させ、市民の連帯を築いていきたい。

(グングン裁判の要求実現を支援する会・御園生光治)

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