2016年06月10日発行 1431号

【米軍属事件で橋下が暴言/性風俗業「活用」を懲りずに主張/「基地があるゆえの犯罪」を否定】

 沖縄県で発生した元米海兵隊員の軍属による女性死体遺棄事件をめぐり、橋下徹・前大阪市長が暴言を連発している。「米軍基地があるゆえの犯罪」という主張を「移民排斥の論理」と批判。さらには性風俗業の活用が「解決策」との持論を展開している。安倍政権への援護射撃のつもりなのだろうが、こんな輩(やから)が安倍の改憲パートナーなのだ。

 オバマ米大統領が来日した5月25日、沖縄では「犠牲者を追悼し米軍の撤退を求める緊急県民集会」が行われた。約4千人が米軍嘉手納基地ゲート前に集まり、沖縄からの基地撤去や日米地位協定の抜本改定などを訴えた。

 「なぜ私たちの命は軽視されなければならないのか。基地は要らないという声を世界に広げていこう」と訴えたのはシールズ琉球の玉城愛さん(21)。5歳と0歳の娘を連れた沖縄市の女性(35)は、「これが平和って言えますか。沖縄に住んで娘を夜道で歩かせられますか」と涙ながらに話した(5/26朝日)。

 このように、沖縄では「基地があるゆえの犯罪」(翁長雄志(おながたけし)県知事)に対する怒りが沸騰している。沖縄の怒りは全国に伝播し、東京発のメディアも「米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない」(5/21朝日社説)といった論調を掲げるようになった。

「外国人排斥」と詭弁

 これにかみついたのが、政界を引退したはずの橋下徹である。表立っては反論できない安倍晋三首相になりかわり、得意のツイッターで言いたい放題つぶやきだした。

 いわく「米軍基地の存在が事件の原因だとして、米軍基地を否定する主張を自称人権派は展開している。これこそまじめに活動している米兵等への人権侵害だよ」「日本企業に属する会社員が殺人事件をやったとして、その企業自体の存在を否定するのか。そんなことはない。今回米軍基地を否定するなら、それは外国人だからだ。(中略)自称人権派は、今、移民排斥と同じ主張をしていることに気付かない」(5/22)

 無茶苦茶な詭弁である。米軍基地撤去の訴えが外国人に対する偏見からきているだなんて、それこそ偏見以外の何ものでもない。大体、日米地位協定という一種の治外法権に守られている米軍関係者を一般人と同列に論じること自体馬鹿げている。

 沖縄では日本復帰から2015年末までの約43年間で、米軍関係者による凶悪犯罪が574件発生している。他県ではこれほどの数の米軍犯罪は起きていない。やはり、沖縄に集中している米軍基地の存在がくり返される痛ましい事件の原因なのである。

すさまじい女性蔑視

 橋下はこんなことも言っている。「米兵等の猛者に対して、バーベキューやビーチバレーでストレス発散などできるのか。(以前に)風俗の活用でも検討したらどうだ、と言ってやった。まあこれは言い過ぎたとして発言撤回したけど、やっぱり撤回しない方がよかったかも。きれいごとばかり言わず本気で解決策を考えろ!」(5/21)

 3年前、普天間基地を視察した橋下(当時大阪市長)は、米軍司令官に性風俗業の活用を提案。帰阪後の記者会見で「戦時中、従軍慰安婦が必要だったのは誰にでもわかる」と発言し、国内外から激しい批判を受けた。

 その時は渋々発言を撤回した橋下だが、やはり本音は変わっていなかった。彼の発想では「兵士は殺人マシン。暴発を防ぐには女を与えるのが一番」ということになる。米軍駐留のための人身御供として女性を「活用」せよ、というわけだ。女性蔑視、人権軽視もはなはだしい。

 ちなみに、旧日本軍が「慰安婦」制度を本格稼働させて以降も、日本兵による強姦事件は多発し続けた。殺人訓練によって兵士の暴力・征服衝動をかき立てることをやめない限り、性暴力をなくすことなどできないのである。「日ごろ戦闘の訓練を受けている他国の軍隊がこれほど大量かつ長期に、小さな島に駐留し続けることが問題の淵源(えんげん)だ」(5/21琉球新報社説)という指摘はまったく正しい。

戦争をする側の発想

 実は、オバマの広島訪問が決まった際にも橋下は暴言ツイートを行っていた。「今回のオバマ大統領の広島訪問の最大の効果は、今後日本が中国・韓国に対して謝罪をしなくてもよくなること。過去の戦争について謝罪は不要。これをアメリカが示す。朝日や毎日その一派の自称インテリはもう終わり。安倍首相の大勝利だね」(4/27)

 米国の大統領は原爆投下を謝罪しない。だから日本も侵略戦争や植民地支配の謝罪をしなくてもいい、というのである。徹頭徹尾、国家権力者=戦争をする側の発想だ。戦争の被害者である民衆の苦しみ・悲しみは眼中にない。そんなものは戦争遂行の邪魔になるから考慮しなくてよいということなのだ。

 橋下を改憲パートナーに位置づける安倍晋三も同じ発想の持ち主といえる。「国民は戦争・軍隊を受忍せよ」という連中がのさばっている限り、「基地があるゆえの犯罪」はなくならない。   (M)



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