2016年07月01日発行 1434号

【産めよ、働け°ュ要の安倍「女性活躍」 野党共闘の政策で権利拡大を】

 「1人ひとり、それぞれの人生を大切にする考え方が一億総活躍」「女性政策はその中核」。6月2日閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」のうたい文句だが、一体だれが信じるか。

子育て・介護支援も口だけ

 安倍は、女性活躍政策を「希望出生率1・8」実現の手段として位置付ける。「プラン」では、少子高齢化が日本の経済成長を阻んでいるとして「死に物狂いで取り組んでいかない限り、投資は期待できない」と危機をあおる。グローバル資本のもうけのためにもっと子どもを産めと言っているにすぎない。

 評判の良くない「希望出生率1・8」も「国が推奨しているわけではない」と言い訳し、「夢をつむぐ子育て支援」と強調する。だが、要は経済目標達成のために女性は「活躍」せよというのだ。

 女性の働き方について、目新しい政策はない。

 子育てをしながら仕事を続けるために待機児童解消は緊急の課題だ。保育士不足の原因は賃金の低さと不安定雇用だが、「プラン」は、低賃金を放置したまま、保育分野での「短時間勤務保育士や高齢者の就業の推進」と非正規の保育士を増やすことで乗り切ろうとする。「現在4万円程度ある全産業の女性労働者との賃金格差がなくなるようにする」と言うが、対象は「技能・経験を積んだ保育士」だけ。しかも男性の平均年収514万円に対して女性272万円(14年民間給与実態統計調査)という男女格差の下で、女性の水準に合わせればいいとする。男女の賃金格差を解消する具体策は全くない。

 受け皿の足りないところは「大家族で、世代間で支えあうライフスタイルを選択しては」と家庭責任に転嫁。「家族は互いに助け合わなければならない」とする自民党改憲草案「家族の絆」の布石だ。

 介護についても同様だ。「介護離職ゼロ」「仕事と介護の両立が可能な働き方」と述べる。子育てや介護をしながらフルタイムで働くことはできないからと、「多様な働き方」やテレワーク(IT利用の在宅勤務など)を勧める。子育てや介護を携わるのは圧倒的に女性が多い。社会全体の低賃金長時間労働の見直し、男性の家事労働参加が必要だ。とはいえ、長時間労働しなければ生活できない現実の中では、女性の負担がますます増えることになる。
 安倍政権の女性政策は、「女性の貧困」にも「子どもの貧困」にも一言も触れない。こんな政策で「ゆたかな人生」など送れるわけがなく、女性は死ぬまでこき使われる。

野党共闘で共同提案も

 通常国会では、野党4党が戦争法廃止をはじめ15本の議員立法を共同提案した。保育士の給与を月額5万円引き上げる、介護・福祉職員給与を1万円(介護職)・6000円(事務職)引き上げる、残業時間の上限を制限する、などの法案が出された。

 雇用・労働以外でも、選択的夫婦別姓制度の導入や性暴力被害者の支援体制確立の法案も出された。野党が共闘して安倍政権に代わる政策を出したことは大きな前進だ。

 女性政策を女性の立場から実現するためには、女性国会議員をもっと増やさなければならない。現在衆参両院議員717人のうち女性議員は83人、割合は11・6%でしかない。列国議会同盟(IPU)の女性国会議員比率ランキング(15年)では147位で、OECD(経済開発協力機構)加盟国30か国中29位である。

女性議員増やすクオータ制

 この実態を変えていくためにはクオータ制の導入が必要だ。クオータ制とは、国会・地方議会議員候補者、国・地方自治体の審議会、公的機関の議員・委員の人数を一定の割合で割り当てる制度のこと。現在すでに87か国で実施され、世界の趨勢となっている。

 クオータ制を導入した国々では、女性の権利の面での成果が出ている。台湾では、離婚する際に妻は夫からそれまでの家事労働分の賃金を受け取れるように民法が改正された。韓国でも戸主制の廃止など女性の権利が拡大した。

 日本では、ようやく「公職の候補者の数ができる限り男女同数となることを目指して行われなければならない」とクオータ制を盛り込んだ「政治分野における男女参画推進法案」と「公職選挙法の一部を改正する法律案」を、野党共闘で提出するところまで来た。女性の権利の拡大のためにも、参院選で安倍打倒をめざす候補者の勝利は不可欠だ。

 (平和と平等を拓く女たちの絆<OPEN>・山本由子)

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