2016年07月01日発行 1434号

【沖縄県民大会に6万5千人 繰り返さないために全基地撤去を 怒りは限界を超えた】

  「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾!被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会」が6月19日、那覇市の奧武山(おうのやま)陸上競技場で開催された。主催は辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議。参加者6万5千人は米軍人・軍属による凶悪犯罪を2度と繰り返させないための行動を誓い合った。

 梅雨が明けたばかりの沖縄。日差しは強い。大会開始は午後2時。空に浮かぶ雲が太陽を隠すのはほんの一時だ。犠牲者への追悼の思いをこめ黒い服を身にまとった参加者が1時間以上前から会場に足を運び、静かに開会を待つ。深い悲しみが激しい怒りを包んでいるようだ。労働組合・団体を示す幟旗(のぼりばた)は多くない。家族で、友人、親戚が連れ立っている。競技場の芝生はすぐに見えなくなった。

■何をすべきか■

 オープニングは、わが子の成長を願う古謝美佐子さんの歌『童神(わらびがみ)〜天の子守歌』。事件で娘を奪われた父親の思いが大会に寄せられた。「次の被害を出さないためにも『全基地撤去』『辺野古新基地建設反対』、県民が一つになれば可能だ。県民、名護市民として強く願う」

 2度と繰り返させない。そのために何をしなければならないのか。大会が問いかけたことだ。主催者のオール沖縄会議共同代表4人があいさつに立った。

 稲嶺進名護市長は「国との闘いの中で辺野古(新基地建設)を一時的にしろ止めることができた。県民の力だ」と強調。心ひとつに頑張ろうと訴えた。建設業やスーパーなど多業種を経営する金秀グループ呉屋守将会長は国民を守れない安倍総理の責任を追及した。「強姦救援センター・沖縄」代表も務める高里鈴代さんは、沈黙を強いられている犠牲者の声を集め新基地建設と海兵隊駐留を認めない行動につなげようと呼びかけた。

 「軍隊の本質は命を奪うこと」と指摘したシールズ琉球の玉城愛さんは「軍隊によって命を奪うことが正当化される、こんなばかばかしい社会をだれが作ったのか」と自問。「考えれば考えるほど私に責任がある。私が当事者だ」。軍隊のない社会を実現するのは自分たちだと発言した。

 「変わらない過去、変えていこう未来」と被害者と同世代である4人の大学生が、基地被害をなくす思いを語った。

 自民・公明・おおさか維新の改憲勢力は、こぞって大会から逃げた。改憲は、基地被害をなくすことからは真逆の行為。悲しみさえ共有しない。

■悲しみと怒り■

 翁長雄志(おながたけし)県知事のあいさつには一段と大きな拍手が起こった。21年前の女児強姦事件。2度と起こさないと誓いながら当時生まれた女性が被害にあったことをあげ、「政治を変えることができなくて申し訳ない」と謝罪した。参加者に共通する思いだ。地位協定改定、新基地建設阻止に立ちはだかる安倍政権の壁に「まきてぇーないびらんどー(負けてはいけませんよ)」と決意を表した。

 捨て石にされた沖縄戦、天皇制と引き換えにされた米軍支配、これまで受けてきた差別が幾重にも重なる犠牲者を生んできた。心の底からの怒りが積みあがっている。

 宜野湾市から参加した60代の男性は「ここにいる人は皆、集会スローガンと同じ気持ちだ。家は普天間基地の延長線にある。オスプレイの爆音は異常なほどだ。夜10時以降も飛んでいる。約束など守らない」と怒りを口にした。

 沖縄市から娘と参加した60代の女性は「言いようのない怒りが爆発寸前。若い頃コザ暴動があった。みな忘れていない。いつ現われるかだ」。30代の娘は「小さい頃から基地は当たり前。だが子どもたちに残してはいけない」と思いを語った。

 大会のエンディングは海勢頭豊さんの『月桃』。歌詞に「変わるはてない浮世の情け」とある。「日本が戦前回帰しないよう、沖縄が立ち上がるしかない」と戦争国家をめざす安倍政権の暴走を止める本土の奮起を促した。

 オール沖縄の闘いが全国に広がり、野党共闘が当たり前の状況をつくりつつある。戦後米軍による土地強奪と闘った「伊江島土地を守る会」を阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)(故人)さんとともに支えた謝花悦子さんは「日本政府や良心のない政治家を動かすことができる。本土の理解で希望が見えた」と本土での闘いに激励を送る。

 毎月沖縄連帯ツアーに取り組んでいるZENKO。東京・大阪・沖縄から15人が大会に参加した。田中拓真さんは「2度と事件を起こさせないためには、全基地撤去しかない」と翌日、辺野古の闘いに合流した。



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