2016年07月08日発行 1435号

【沖縄辺野古 世論が生んだ海兵隊撤退@v求 参院選で新基地止める】

県民大会と慰霊の日

 6万5千人が結集し「二度とこのような事件を繰り返してはならない」と誓った6月19日。米軍属による女性暴行殺害事件に抗議する県民大会から4日後の6月23日、沖縄は「慰霊の日」を迎えた。

 県が主催する沖縄戦全戦没者追悼式の平和宣言で翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、先の県民大会を受けて「非人間的で凶悪な事件に強い憤り」と述べ、政府が強行する辺野古新基地への姿勢に「唯一の解決策との考えは到底容認できない」「海兵隊の削減を求める」と、より踏み込んだ。遺族代表としてあいさつした宮城篤正遺族連合会長も「戦争につながる新たな基地建設には遺族として断固反対」と決意を語り、来賓参加した安倍晋三首相に対し痛打を浴びせた。

 女性暴行殺害事件を受け安倍首相は「米側に抗議した、再発防止と地位協定での軍属の扱いの見直しで合意」とあたかも成果のように語ったが、そんな小手先の対応で何も変わらないことを沖縄県民は見抜いている。「綱紀粛正」や「再発防止」を掲げても何も変わらない現実への怒りが県民世論として「海兵隊撤退」の要求を生んだといえる。

 米軍基地に対し「表現が『整理縮小』から『海兵隊の撤退』と県民全体がトーンを上げてきた部分がある」と翁長知事は述べた。これらの要求は県民世論がリードしている。もう軍隊と共存はできないことを示した県民大会だったのではないか。

係争委は国を勝たせず

 6月17日、名護市辺野古の新基地建設計画をめぐる和解後の動きとして注目されていた国地方係争処理委員会の結論が発表された。

 翁長知事による埋め立て承認取り消し処分に対する石井啓一国土交通相の是正指示が適法か違法かを審査してきた委員会は、いずれとも判断しないと結論づけた。理由について「国と沖縄県との間で議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分な現在の状態の下で、当委員会が肯定・否定のいずれかの判断をしても国と地方のあるべき関係を両者間に構築することに資するとは考えられない」とした。さらに「本件是正指示にまで至った一連の過程は国と地方のあるべき関係からみて望ましくない」と指摘。双方が真摯に協議するよう促した。

 総務省が設置した機関で国側に有利な判断が出せなかったのは、これまで国側が行ってきた執行停止や代執行、是正指示など次々と強権的な法的措置をとる姿勢を暗に批判したともいえる。裁判での和解に続き係争処理委からも協議を促されたことで、委員会終了後、早期に裁判に持ち込み今度こそ勝訴で新基地建設のお墨付きを得ようとしていた国のもくろみは崩れた。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は「和解事項に基づき県は提訴すべき」、中谷元(げん)防衛相も「是正は有効」と強がる。だが、県は高等裁判所へ提訴はせず、6月24日、委員会決定に沿って早期の協議開催を求める文書を国へ送った。また一つ、工事の中断期間が延びる可能性が出てきた。国は完全に追い詰められている。

あらゆる権限を駆使

 工事を止める展望は他にもある。元自治体の土木技術者で沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏は、今後知事がとり得る最大の対抗手段として「撤回」を挙げる。「撤回」とは埋め立て承認後に生じた理由によりその効力を存続させることができない新たな事情が発生した場合に行われるもの。新基地建設に反対する県民世論、また、事業の実施段階での沖縄防衛局の違法行為等が「撤回」事由になるという。防衛局の違法行為は、最近も辺野古での新基地建設に伴い2年半で159億円に上る巨額の警備費を東京の2社が独占し官製談合が疑われていることや、現場の警備会社の非正規社員に対する残業代不払いが判明したことなど、枚挙にいとまがない。

 他にも、工事に伴う美謝(みじゃ)川切替ルートの変更や埋め立て土砂運搬方法の一部変更等の設計概要変更申請の承認拒否などなど。仮に敗訴しても、知事が権限を駆使し毅然と対応する限り防衛局は埋め立て本体工事に着手することができないと指摘している。

政治の力で止める

 今一番求められることは政治の力で新基地を阻止することだ。翁長知事は「名護市長選、知事選、衆院選、県議選で県民が(辺野古反対の)民意を表し、参院選がその総括」と位置付けた。7月10日投開票の参院選は決定的に重要な闘いとなる。二度と繰り返させない、二度と悔やまないためにも、新基地反対の強固な民意を改めて示さなければならない。     (A)



 
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