2016年07月08日発行 1435号

【みるよむ(403)2016年6月25日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの若者が結婚したがらない理由とは?】

 イラクでは、結婚せずに独身のままでいる若者が増えている。背景には深刻化する失業や治安状況悪化がある。2016年5月、サナテレビはバグダッドの若者にインタビューし、この問題についての率直な意見を聞いた。

 メディア関係者は、結婚しない若者が増えている理由として、テロ攻撃で殺される若者や国外に逃れる若者が多いことをあげる。「毎日何百人もの若者が殺されている」という状況なのだから、結婚するどころではない人たちも多い。事態は深刻だ。

 もう一つの大きな問題は、失業が多く、経済的に結婚が難しいということである。ある大学生は「中学校を出ても、高校を出ても、大学を卒業しても就職の機会がありません」と語る。仕事がなければ結婚も、将来設計もできない。結婚自体にも高額な費用がかかる。

 結婚したい相手がいるのに、父親から「いとこと結婚しろ」と言われて拒否し、結局結婚しないことがよく見られるという。これも経済的な要因と結びついている。さらに、結婚しても失業などで経済的に苦しくなれば家族を養えず、離婚が増加していく。

 世界的な産油国であるイラクは決して貧しい国ではない。石油を大増産し今や2003年占領時の2倍以上の生産量に達している。ところがその利益はグローバル資本だけに流れ、政府は若者に就職する機会さえ与えない。

 失業者となり、将来の展望が持てずに結婚しない若者が増えている。その上「イスラム国」をはじめとした暴力の激化が続いている。サナテレビは若者の結婚という深刻な問題に光を当て、イラク社会を変えていこうと訴える。

 現在の日本の若者も、程度の差こそあれ同じような状況に追い込まれている。大企業は300兆円以上の莫大な内部留保を持っているのに、若者は失業か、不安定な非正規労働の機会しか与えられない。そうした状況の下で「経済的徴兵制」が狙われている。

 イラクも日本も、若者はグローバル資本の戦争と経済的搾取に苦しんでいる。こんな不正な社会を変えていくことが共通の課題だと気づかされる映像である。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
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