2016年07月08日発行 1435号

【辺野古新基地建設を止める知恵袋 土木技師で抗議船船長 北上田毅さんに聞く(上)】

 沖縄辺野古新基地建設工事を止めた。安倍政権に対峙する翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事、それを包み込むオール沖縄の力だ。キャンプシュワブ・ゲート前の座り込みとともに力を発揮しているのが、防衛省発注工事の問題点を1つ1つえぐり出す闘いだ。その中心にいる北上田毅(きたうえだつよし)さん(1945年生まれ)。自治体土木技師としての経歴をもつ。7月30日、31日に大阪で開催される2016ZENKOで建設阻止にむけた次の一手≠語る。県民大会の朝、話を聞いた(6月19日、まとめは編集部)。



 インタビューの場所に自転車で駆けつけてくれた。さっそく県民大会について聞いた。

 「20歳の女性が殺される、痛ましい事件。いろいろ思うところはある。ただ私は8年前に家族とともに京都から沖縄に移住してきた、いわばよそ者。米軍基地の被害や沖縄の歴史など、勉強する立場であり、何かを語るにはふさわしくないでしょう」

 ひょうひょうとした風貌、朴訥(ぼくとつ)とした語り口。誠実な人柄が伝わってくる。

 「情報公開などで集めた資料を検討し、情報を提供すること。工事を止めるために何ができるかを考えること。それが私の役割と思っている」

入札は出来レース

 北上田さんは京都市の土木技術者だった。労働組合の専従もした。その頃知り合ったフィリピン女性の故郷サマール島を訪問、現地の街作りに協力した経歴を持つ。「フィリピンの中でも最も貧しい島。その島で旧日本軍兵士から虐待を受けた人びとの戦争体験を聞いた」

 駐屯していたのは京都の陸軍第16師団だったことを知った。京都・サマール友好協会をつくり、何度も現地にかよった。早期退職し、NGOとして生活環境改善事業に取り組んだ。

 土木技術者としての経験は基地建設阻止の闘いの大きな力になっている。一般の人にはなじみのない土木工事の設計書や発注の仕方、契約内容について、よくわかっている。

 警備業務の不正問題がある。沖縄防衛局の入札・契約状況調書によれば、「シュワブ海上警備業務」を株式会社ライジングサンセキュリティーサービス(ライジング社と略)に昨年9月1日から今年の3月31日までの期間、約24億円で発注した。1日当たり1100万円。防衛局は予定価格を決めるのに関連業者から見積もりを取った。3社に依頼したが2社は辞退。結局ライジング社の見積もりだけで価格を決め一般競争入札を行った。応札したのはライジング社1社だけ。同社は落札率99・9%で受注した。出来レースだ。

 海上警備業務の監視船には、抗議船の船長や主なカヌー隊メンバーら約60の顔写真とリストが備えられている。警備員らは、そのリストを見て、誰がどのような行動をしているかを防衛局に報告していた。個人情報の違法収集だ。

 防衛省は業者の独断だととぼけたが、民間業者が60名もの顔写真や氏名リストを作成できるはずはない。

違法な個人情報収集

 業務内容を定めた特記仕様書に「警備員は、過去1年間に個人情報保護法の研修または教育を受講しているものとする」と書いてあるのを見つけた。個人情報の収集を業務に含めているのは明らかだ。「2月に仙台高裁で自衛隊の情報収集活動は違法との判決が出ている。防衛局は何らかの利益誘導をして、業者に責任を押し付けたのではないか」。イラク派兵反対活動に参加した市民の本名や勤務先の情報収集を行った情報保全隊の行為がプライバシー侵害で違法とされている。

 翁長知事の公有水面埋立法に基づく承認取り消しに対する政府の「是正指示」について、国地方係争処理委員会は正当かどうかの判断をしなかった。「承認取り消しは残ったまま。県は放っておけばよい。来年1月から工事再開を狙っていた政府の思惑は外れた」          (続く)

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