2016年07月15日発行 1436号

【みるよむ(404)2016年7月2日配信 イラク平和テレビ局in Japan 若者に広がる麻薬中毒】

 イラクでは今、若者の間で麻薬が広がっている。かつては麻薬の被害など全くといってよいほどなかった。それがなぜ10代の若者の間にまで広がっているのだろう。どんな対策をするべきなのか。2016年5月、サナテレビはこの問題について市民にインタビューを行った。

 インタビュアーのサジャド・サリームさんによると、イラクでは1970年代には法律で麻薬の密売を禁止し、80年代から90年代もさまざまな禁止措置で麻薬の被害を防いでいた。ところが、今では若者に麻薬が蔓延している。

 この事態について、麻薬調査官は「貧困と政治経済、社会状況が若者を麻薬使用に追い立てている」と指摘する。現在のイラクでは、大学を卒業しても容易に就職口を見つけられない。その結果、まともに生活できない貧困が待ちうけている。「麻薬蔓延の原因はイラク社会の中にある」という状態なのだ。

 ある市民活動家は「麻薬は飲酒と似て、失業している、不公平を感じるなどの現実から逃避をするために使われている」と語る。麻薬の被害は、イラク南部を中心に広がり、首都バグダッドへ、そして高校生などティーンエージャーにまで及んでいる。特に深刻なのはやはり貧困地域である。

 法律家は「子どもの麻薬被害については家族が重要な役割を持つ」と主張する。貧困の結果、家庭が崩壊した状況では、親が麻薬に手を出すこともあり、被害について教育することも難しくなる。子どもが麻薬被害にさらされやすくなる。

根本原因は戦争と貧困

 イラク市民の語る麻薬被害は、日本や欧米社会でも見受けられる。グローバル資本が生み出す貧困と格差が若者たちの心を圧迫し、麻薬や危険薬物の使用に追い込んでいく。状況はよく似ている。

 10代の若者にまで広がる麻薬の被害。その根本的原因は2003年のイラク占領以来の社会の混乱にある。戦争と貧困の元凶、グローバル資本の支配が事態を作り出しているのだ。

 サナテレビは、事態の深刻さを明らかにするとともに、家族と社会が一緒になって社会的な取り組みにする中で麻薬の被害を根絶することを呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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