2016年07月15日発行 1436号

【沖縄辺野古/国地方係争処理委が決定/法無視の国を勝たせず/紛争解決への協力求める】

 国地方係争処理委員会は6月21日、名護新基地建設のための公有水面(海)埋め立てを巡る沖縄県知事からの審査申出について、国・県双方の継続協議を求める審査結果を決定した。

 審査結果に至る経緯を見ていこう。

 2013年、仲井真前沖縄県知事が、埋め立てを承認した。14年に就任した翁長知事は15年10月、この埋め立て承認は誤っているとの判断を示し、承認を取り消した。安倍内閣は16年3月、代執行訴訟の和解を受け、知事の埋め立て承認手続きに関与する国土交通大臣の名で「翁長知事の『取り消し決定』を是正する」、つまり仲井真前知事の埋め立て承認を認めるよう翁長知事に指示した。この指示が地方自治法に照らして違法であるとして、翁長知事が係争処理委員会に申し立てた。

事実上の政府批判

 係争処理委員会での沖縄県の主張は以下のとおり。

 「普天間飛行場返還の必要があることからは新基地建設の必要があることは導かれないのであって、埋め立ての必要性についての具体的、実証的説明がなく、埋め立てそのものや埋め立て地上の新基地建設によって生じる環境破壊や騒音被害、沖縄の基地負担の固定化により沖縄県の地域公益が著しく損なわれることを正当化するに足りる高度な埋め立ての必要性は認められない」ため、公有水面埋め立て承認の要件である国土利用上適正かつ合理的であること≠満たさず、仲井真知事が行った埋め立て承認は誤っており、取り消し可能である」

 まったくその通りだ。

 この主張に対し、国は沖縄県にまともな説明は一切せず、あたかも「新基地建設が普天間基地返還の必須条件」であるかのように強弁してきた。

 では、係争処理委員会はどう判断したのか。

 審査の結論は「国土交通大臣の是正の指示の適否について判断しない」だ。

 結論に至る理由は、安倍の新基地建設に向けた強引さを事実上批判する内容だ。

 係争処理委員会は「(国・県)両者の立場が対立するこの論点(注・新基地建設の公益適合性)について、議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分な状態のまま、一連の手続きが行われてきたことが紛争の本質的な要因」と指摘。「国と地方の双方に関係する施策を巡り、何が公益にかなった施策であるかについて双方の立場が対立するときは、両者が担う公益の最大化を目指して互いに十分協議し調整すべき」と断じた。

国のとるべき道はひとつ

 係争処理委員会の結論に沿えば、事態は次のように進まなければならない。

 2000年施行の地方自治法改定は、地方自治尊重の立場から、国と地方の関係を従来の上下・主従から対等・協力関係であることを明確にし、国の地方に対する関与を制限した。国有財産である公有水面(海・湖沼・河川)の埋め立て承認は国(国土交通省)の仕事だが、自然環境・生活環境や漁業への影響などから地域の実情を知る都道府県が審査し、その可否決定が「法令の規定に違反していると認めるとき」に国が是正指示する仕組みとなっている。

 新基地建設が沖縄の公益にかなうことを国は一切示していない。しかも普天間基地の危険性は日米両政府が認めており、その返還が公益であることは国も否定できない。

 一方、埋め立て承認の権限は地元事情を理解している都道府県知事に委(ゆだ)ねられている。県が承認を取り消した以上、国は沖縄県の意思を尊重する形で、「公益の最大化」である普天間基地返還を目指さなければならない。

 国が取るべき道は一つだ。それは、新基地建設によらない普天間基地返還実現へ、県と協力し米国政府と交渉することである。

安倍強権政治に終止符を

 だが、安倍政権は全く逆のことをしてきた。翁長知事就任当初は、協議に上京した知事との面談を断った。沖縄県との集中協議でも、新基地建設を「唯一の選択肢」として譲らず時間ばかりを費やした。工事準備の強行と並行して、訴訟、是正指示など一方的服従を強いる強権的対応を繰り返してきた。

 新基地建設中止を求める民意の象徴である現地の反対運動弾圧を繰り返した。海上保安庁・警視庁機動隊を動員し、座り込む老若男女を暴力的に排除してきたのだ。

 安倍政権の沖縄県民に対する仕打ちは、強権と暴力で政府に従わせようとするものであり、地方自治の破壊だ。

 係争処理委員会は総務省に置かれ、委員は総務大臣が任命する。その委員たちが、今回は国の是正指示を適法≠ニはせず、国の片棒を担ぐ判断を出さなかった。これは、県民と翁長知事が安倍政権の強権政治に真っ向から立ち向かい、その横暴を白日の下にさらしてきたからだ。

 民意に背き、地方自治を破壊し、戦争する国をひたすら目指す安倍政権を終わらせなければならない。

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