2016年09月02日発行 1442号

【戦争国家めざす 安倍日本会議改憲内閣/新自由主義時代の改憲を加速】

 改憲へ加速する安倍政権。8月3日発足した再改造内閣は、戦前回帰願望が強い「日本会議」支援議員が大半を占めた。緊急事態条項の導入を真っ先に掲げる日本会議などの改憲方針は、新自由主義政策の矛盾を強権的に乗り切るための選択に呼応する。「草の根改憲運動」に対抗し、戦争と新自由主義政策への怒りの声を地域に広げよう。

日本会議改憲内閣

 安倍晋三首相は、第3次政権の再改造内閣を「日本会議」支援メンバーでかためた。日本会議は、皇室の尊崇、新憲法制定などを運動方針とする右派文化人・組織の総結集団体。宗教団体などから多くの役員が出ている。今回、公明党の石井啓一国土交通大臣を除く19閣僚はすべて「神道政治連盟国会議員懇談会」(会長安倍晋三)に所属している。「神道政治連盟」は日本会議の有力構成団体であり、神社庁を核とする戦前の国家神道復活をめざす政治団体で、各地に存在する神社組織は日本会議の実働部隊だ。つまり安倍新内閣は国家神道をベースにする明治憲法復活をめざす団体の支援者ばかりなのだ。

 中でも最右翼と言われるのが防衛大臣に就いた稲田朋美だ。稲田は「憲法前文には、神話の時代から連綿と連なる歴史を保持する日本という国としての理念を書くべき」を持論としている(『私は日本を守りたい』2010年)。

 日本会議改憲内閣ともいえる安倍新政権は、戦前回帰の改憲を進める気なのかと問えばことばを濁す。「どこを変えるのか」と聞かれた安倍が「前文からすべてだ。だが、ただ要望を言うのは政治ではない」(7/10テレビ東京)と答えたように、グローバル資本の要請にどう応えるかが、自分の役割と考えている。

弱肉強食下の独裁

 こうした極右政治家が新自由主義の時代にどんな役割をはたそうとしているのか。

 「靖国に眠る246万柱の英霊が自分の政治家としての原点」とする稲田は、06年以来欠かさなかった敗戦記念日の靖国参拝を今年はやめた。アフリカ・ジブチの自衛隊基地を訪問、「海賊対処活動」や南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊への物資輸送の任務に就く隊員を激励、基地の一層の活用を誓った。

 「靖国は不戦の誓いをするところではなく、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところだ」と稲田は言う(『WiLL』06年9月号)。まさに、南スーダンの自衛隊員は殺し殺される状態に置かれている。集団的自衛権行使=軍隊による威嚇・武力行使をめざす戦争国家にとって、戦地の隊員を激励することは戦争犯罪人を顕彰する「靖国参拝」と同等以上の意味がある。

 自衛隊基地があるジブチには米、仏、中も軍事基地を置き、アフリカ進出の足掛かりとしている。南スーダンはグローバル資本の権益争いの真っただ中にある。国連安保理は8月12日、PKO派遣期間を4か月延長、4千人増派を決定したが、ロシア、中国などは棄権した。問題なのは南スーダン政府が反対していることだ。PKOの原則である当事国政府の合意もない、内戦状態のアフリカの小国に対する軍事介入は、米ロをはじめ各国政府の利害が入りまじるアフリカをめぐる新たな植民地争奪戦だと言える。

 時代は100年前に似ている。第1次世界大戦はまさにアフリカなどの植民地争奪戦だった。大日本帝国復活をめざす日本会議の思想は「時代遅れ」ではない。弱肉強食の新自由主義時代にふさわしい。日本会議は緊急事態条項導入を改憲の最優先に掲げている。それは明治憲法「天皇の統治権」=独裁を実現する道だからだ。そして民主主義、基本的人権を「国益」のために停止することはグローバル資本が願っていることでもある。

改憲反対は地域から

 日本会議をはじめ右派改憲勢力は、9月から「改憲全国キャラバン」に取り組む。地域での署名集め、地方議会での意見書採択、国会への要請を強めるという。改憲支持の世論は少数だ。だが、各地の神社や保守「草の根運動」で、地域からの組織化が狙われている。新自由主義政策が生んだ貧困や将来展望のなさ―若者が感じる現状への不安、不満を逆手にとり、変革の願いを改憲へと誘導する狙いだ。

 稲田は、「国民生活が大事なんて政治は、間違っている」と言いきっている(リテラ6/27)。「美しい日本」をめざす面々は市民生活など眼中にない。自らはカネに汚く、「白紙領収書疑惑」や「ともみの酒」買収疑惑が浮かんでいる。稲田ばかりか安倍を先頭に加藤、丸川、高市、世耕など他の閣僚も続々とカネにまつわる疑惑が挙がっている。こんな奴らが、「日本のために血を流せ」と号令をかけていることをことごとく暴露し、改憲反対、戦争と新自由主義ノーの声を地域に広げよう。

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