2016年09月02日発行 1442号

【辺野古・高江阻止へ広がる闘い 車140台550人のゲート封鎖 米国退役軍人団体も辺野古反対を決議】

 沖縄での参院選敗北をうけて、安倍政権は沖縄を徹底的に弾圧する三正面作戦≠ノ打って出ている。一つは、7月22日から始まった戒厳令同然の高江ヘリパッド建設工事強行、二つ目に辺野古陸上部分の作業ヤード建設など工事再開、三つ目が県を再び提訴。運動の分断を狙う攻撃だ。

 安倍晋三首相が政財界人らとゴルフ三昧の長期休暇を楽しむ8月19日、沖縄県民は北部の高江と南部の那覇市で反転攻勢の闘いに起ちあがった。

8月19日の反撃

 8月19日午前6時、沖縄本島北部の国頭(くにがみ)村と東村にまたがる米軍北部訓練場のメインゲートをはさみ県道70号線に沿って南北に約1キロ、乗用車約140台と市民約550人がゲート付近を何重にも完全に封鎖した。

 沖縄防衛局は、旧盆にあたる8月14日から18日まで高江の工事を中断すると発表。19日から本格的なヘリパッド建設工事が再開されることが予想されたため、早朝からメインゲート前で大規模な集会を沖縄平和運動センターなどが開催した。この日の行動で、機動隊による県道70号の封鎖や検問、砂利を搬入するダンプカーの走行を5時間以上にわたって阻止することができた。人がたくさん集まれば止めることは可能だ。

 同日午後1時、那覇市の福岡高裁那覇支部前で「辺野古新基地建設を造らせないオール沖縄会議」が辺野古違法確認訴訟第2回口頭弁論の事前集会。国から訴えられた翁長雄志(おながたけし)県知事の本人尋問を激励しようとに千人が結集した。「頑張れ!」「応援してるぞ!」と参加者の力強い声援が知事を裁判所に送り出した。

 弁論で知事は、国からの埋め立て承認取り消しの是正の指示に従わなかったことは違法な「不作為」には当たらないと主張。「このような事態が繰り返されると、日本の民主主義・地方自治は今後大変な困難をきわめる」と訴えた。翁長知事以外の証人申請はすべて却下され、裁判はこの日で結審した。「(裁判)結果には従うか」などと、多見谷寿郎裁判長による非常に政治的で挑発的な訴訟指揮が行われている。判決は9月16日に言い渡される予定だが、安倍政権の肝入りで異動してきた裁判長に期待はできない。

オスプレイ訓練の強化

 米軍北部訓練場の高江ヘリパッドも、辺野古新基地と同様に移設ではなく基地機能の強化だ。

 北部訓練場は、通称「ジャングル戦闘訓練センター」と呼ばれる。密林と渓谷の中を海兵隊員が食糧を一切持たず3日間敵から生き延び、最後に上空の輸送ヘリからのワイヤーで脱出する訓練だ。だが、60年代のベトナム戦争では必要だったジャングル訓練も現代の戦争では無用となった。

 米軍が今必要としているのは、オスプレイパッド(離着陸場)だ。新しいパッドを使い、計画では辺野古新基地から飛び立ったオスプレイがN1地区北側にある宇嘉川河口から上流に低空飛行で急襲する訓練が想定される。沖縄の基地負担軽減のために北部訓練場の一部を返還するのではない。使わなくなったジャングル訓練区域を返還し、新たなヘリパッド施設がほしいのが米軍の本音だ。海兵隊の殴り込みのための訓練施設を決して造らせてはならない。

米国で辺野古反対の連帯

 辺野古と高江での沖縄県民の闘いは、確実に国内外に連帯を広げている。

 米国の平和運動団体VFP(平和のための退役軍人会)の第31回年次総会が8月12日、カリフォルニア州バークレー市で開催された。VFPは、1985年に設立され全米120の支部を持ち会員数約8千人。イギリスやベトナムにも支部があり、世界的にも著名な団体だ。2004年にはIVAW(反戦イラク帰還兵の会)結成にも尽力した。

 今年度の総会には、結成したばかりのVFP琉球沖縄国際支部のダグラス・ラミス代表など5人が参加。2014年名護市長再選以降、すべての選挙で辺野古新基地建設に反対する候補が当選し、県民が新基地建設ノーの民意を何度も政府に突きつけているにもかかわらず、辺野古や最近の高江ヘリパッド建設など機動隊による暴力的な工事強行が続く実態を訴えた。

 辺野古新基地建設と米軍北部訓練場でのヘリパッド新設の中止を求める2つの決議案は、全会一致で可決。総会後、全米各地の支部では、地元の地方議会に同決議案を働きかける。米国では、昨年バークレー市議会、マサチューセッツ州ケンブリッジ市議会で辺野古新基地建設に反対する決議案が可決されている。8月下旬にはワシントン州のシアトル市議会でも決議案提案・審議を求める動きが始まる。

 違法のかぎりをつくす高江ヘリパッド建設に、インターネットの動画やフェイスブックなどで現状を知った若者が全国から駆けつけている。8月9日入籍したばかりの新婚旅行のカップルが高江を訪れたことに、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんは「これで高江の勝利は間違いない」と飛び上がるように声を弾ませた。    (N)



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