2016年09月02日発行 1442号

【区域外避難者住宅提供打ち切り/一人も路頭に迷わすな/公的住宅の確保を】

 福島県は8月17日、区域外避難者への住宅無償提供打ち切りに伴う支援策として昨年末に打ち出した「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」の一部変更を発表した。

 民間賃貸住宅の家賃補助の対象所得要件を月15万8千円以下(単身の場合)から21万4千円以下に緩和する。公営住宅法施行令の障害者・高齢者世帯の基準を適用した。同一県内での移動のみ補助するとしていたが、首都圏の場合は他県への引っ越しも対象とする。また、雇用促進住宅やUR賃貸住宅の入居者にも県の家賃補助制度が適用される。これらにより、対象は全国で約1200世帯から2000世帯に広がる(福島県生活拠点課)。昨年末の支援策発表以降に民間住宅に引っ越した世帯も、収入要件を満たせば来年1月から補助金が受けられる。

 小さな成果だが、これさえ運動がなければ実現しなかった。区域外避難者に対する福島県のスタンスは“帰還促進”ではなく“切り捨て”だ。福島市・郡山市・いわき市は30万都市。わずかな人数の「うるさい人」は帰ってもらわなくて結構という姿勢が露骨だった。その県を突き動かしたのは「今の住居に住み続けたい」と当事者が署名で、交渉で、戸別訪問で粘り強く声を上げてきたからである。

 住宅支援の継続を求める請願等が全国17の自治体で提出され、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)や原発被害者訴訟原告団全国連絡会(原訴連)など全国規模の被害者団体が「区域外避難者の切り捨ては被害者全体の切り捨てに連動する」と集会・交渉を重ねた。避難継続の声明には、1週間で500人を超す避難者が名乗りを上げた。

生活実態を無視

 しかし、問題は山積している。第1に、期間2年・上限月3万円の補助で「生活再建・自立」は可能なのか。県自体「2年間≠ヘシミュレーションの結果ではない。そこまでになんとか」と希望的観測を述べるだけだ。補助額も「地方と都会の家賃相場は違うが、東京の住人だけを高くできない」と認めている。

 第2に、前年度所得を基準にしているため、預金を切り崩して生活費に充てた、ローンを組んで物品を購入した、転職して給料が半減したなど、現在の生活実態を反映したものになっていない。

 第3に、都営・県営住宅や国家公務員住宅入居者への支援は受け入れ自治体まかせになっていることだ。福島県は「公的住宅を確保するよう各自治体に要請している」にすぎず、新潟県のように家賃1万円の追加支給や独自の収入要件設定を行った自治体もあれば、何ら対策をとっていない自治体もある。東京都は200戸、埼玉県は100戸と避難者向けに優先入居枠を示したが、今の場所に住み続けられない場合は引っ越し費用や引き渡しの際の修繕費もかかってくる。公的住宅間の移動であっても困難になる。

 “避難者一人も路頭に迷わせない”―これが運動の共通の課題だ。そのために、避難者世帯分の数の公的住宅を確保させなければならない。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS