2016年09月02日発行 1442号

【2016ZENKOin大阪で介護現場から声あげる/尊厳ある暮らしを!/医療・介護の破壊を止める】

 2016ZENKOでは「尊厳ある暮らしを!医療・介護の破壊を止める」をテーマとした分野別討議が行われた。介護問題の論議を踏まえて打ち出された方針と現場からの報告を紹介する。

キーワード「公的責任」

 現在、介護にかかる総費用は約10兆円。「税と社会保障の一体改革」の報告は、2025年には21兆円規模となり、消費税なら20%が必要と試算。介護保険の財源構造は保険料が50%、国庫負担が25%、残りは県と市が負担する。厚労省試算では保険料は8600円になるとするが1万円を超えることは必至。制度そのものが成り立たない事態が起きている。しかも今後38万人の介護人材が不足すると発表されている。

 政府の考える「持続可能な制度設計」とは「自助、自己責任」を根本に、介護サービスの利用を抑える、または使えない制度にすることだ。それはすでに2015年の制度改定から始まっている。利用料負担2割を導入し、世帯分離による非課税扱いを無くし、特別養護老人ホームは要介護3以上とした。また、報酬単価が引き下げられ、介護事業者の倒産が過去最多と報じられている。特に小規模デイサービスでは、10%も下げられたため廃止に追い込まれた事業所が多く、高齢者の居場所・行き場が奪われた。また予防給付の対象となる人は介護保険から外して自治体の独自事業に移行され、介護の担い手をボランティアに丸投げする計画も準備・進行している。18年度の改定では要介護1、2は生活支援廃止が盛り込まれる計画になっており、さらなる介護難民続出が懸念される。

 10年後を見据えてどう闘うか。「自助・自己責任」に対抗するものは「尊厳ある暮らし」である。それは「生きる意欲を育む関係性が満ちている状態」であり、小規模デイや訪問介護などはその役割を大きく担っている。憲法13条の幸福追求権、25条の生存権に基づき、尊厳ある暮らしが積極的に構築される社会でなければならない。小規模デイなどが中心となって「尊厳ある暮らし」「公的責任」をキーワードに、事業所、労働者、当事者と家族がつながり、声を上げる取り組みを起こす時だ。介護保険制度を維持するのであれば、国庫負担を倍増し、利用者負担の軽減と介護労働者の大幅賃上げを実現していこう。

(兵庫県西宮市・小規模介護事業所・畑廣昭)


生活支える小規模事業所

 今年のZENKOは、私にとって介護保険制度のおかしさを確信するとともに、新しい人とつながれ元気をもらえる場となった。

 2015年4月、介護報酬が大幅に引き下げられた。その結果「介護・福祉の倒産最多」(10/25朝日)となり、「1月から9月の間で57件」「小規模なところが38件と全体の7割を占める」と報じられた。実際私の事業所も、1割の減収だった。わずかに出せていたスタッフへの寸志すら厳しくなってしまった。

 私たち小規模事業所は何を支えているのか。それは、地域の在宅介護だ。大手ではできない、小さいからこそできるその人に合わせた必要なケアが、生活を支えている。

 私の事業所は、朝9時から夜の8時までニーズに合わせて時間帯を選んで利用できる。介護をしている家族が仕事を終え帰宅する時間に合わせて自宅にお送りできる。家族の急な入院や用事にはお泊りができる。在宅介護は本人とともに家族のピンチをどう支えるかも大切なポイントだ。何より小規模の良さは、すぐ近くに人がいる安心感。特に認知症の方にはいい。手厚く、一人ひとりに寄り添ったケアが、その人らしい尊厳ある暮らしを支える。小規模事業所は、利用の時間や回数を増やしたりお泊りを増やす中で、重度になっても亡くなるぎりぎりまで利用される方が多いのも特徴だ。

 こうした在宅介護を主力となって支える小規模事業所を切り捨てようとする政策に私は怒りを感じる。法改悪が繰り返される中で、現場は日々バタバタで流されそうになるけれど、尊厳ある暮らしを守ろうと頑張る人たちとつながり、現場の声を集めて、厚労省へ抗議したいと思う。誰もが最期まで「生きていてよかった」と思えるような尊厳ある暮らしができる社会へと変えていきたい。

(大阪市・小規模介護事業所・川田千尋)

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