2016年09月09日発行 1443号

【みるよむ(409) 2016年8月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan ラマダンの断食をしない市民が逮捕される社会とは?】

 2016年は6月7日から7月5日までがイスラム教の断食月ラマダンにあたる。イラク政府は、ラマダンの断食をしない人を処罰すると発表した。サナテレビは、バグダッドの市民に政府の処置について意見を求めた。市民は宗教の名にによる自由の侵害と抑圧に怒りの声を上げた。

 イスラム教ではラマダンに断食しなければならないとされるが、数億人以上のイスラム教徒すべてが厳密に実行しているわけではない。しかもイラクには、キリスト教徒をはじめさまざまな宗教の信者も、無宗教の人もたくさんいる。にもかかわらず、ラマダンに断食をしない市民を政府が逮捕したり、罰金を払わせているという。

 女性の市民活動家は「イラクには民主主義があり、自由の国だ。キリスト教徒でも断食しなかったら逮捕されるかもしれないなど、文明人のやることか」と厳しく批判する。

 この女性は「イラク政府が『イスラム国』(IS)のもう一つの顔をしている」と指摘する。「イスラム国」は、断食をしない人を電柱につるす公開の絞首刑にしている。アバディ政権は、政府が裁判所の令状なしに誰でも逮捕できるう「対テロ法」の規定を利用して断食しない人を逮捕している。「イスラム国」に対する「対テロ戦争」を名目に、実際には市民への暴力的な宗教支配を続けているのだ。

 男性の市民活動家は、ムタナビー通りまで政府が何の理由もなしに閉鎖したことに憤る。ムタナビー通りはバグダッドの文化の中心街として知られ、自由な討議や進歩的な催し物がよく行われてきた。イラク労働者共産党が市民と対話する公開討論会を開くこともあり、サナテレビも市民の自由な取り組みの取材やインタビューを行ってきた。

宗教支配で不満抑圧

 イラク政府がラマダンの断食をしない人を逮捕してイスラム教の宗教支配を強めるのは、市民・労働者の不満を抑え込むためだ。

 この手口は、市民の権利を奪い戦争遂行へ憲法を改悪する安倍政権と似ている。改造内閣は、閣僚の4分の3が靖国神社参拝=宗教支配を狙い侵略戦争を賛美する日本会議に所属する。

 グローバル資本の利益のために行われる人権破壊に対し、イラク市民と一緒にノーの声を上げたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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