2016年09月09日発行 1443号

【沖縄ヘリパッド/機動隊が記者を弾圧/それでも伝えぬ御用メディア】

 沖縄県の米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に抗議する市民を取材中の沖縄地元2紙の記者が、機動隊に強制排除される事件が発生した(8/20)。

公然と表現の自由侵害

 正当な取材活動に対する露骨な妨害行為だ。憲法で保障された表現の自由を脅かすものであり、強く抗議する。

 ヘリパッド建設工事が強行されている東村高江。反対する住民らはこの日の朝、工事車両の搬入を止めようと県道70号にかかる高江橋の上に座り込んだ。午前10時25分、機動隊による強制排除が始まった。座り込む人びとを抱え上げ、強制的に場所を移動させた。取材妨害はこのとき発生した。その様子を当該の琉球新報記者はこう書いている。

 「市民が排除される様子を撮影していると、何の確認もないまま、後ろから羽交い締めにされた。2人の機動隊員に両腕をつかまれた記者は『やめてください』と声を出したが『移動してください』とさらに背中を押された。約40メートルほど移動させられた際、近くにいた小口幸人弁護士が『新報の記者だぞ』と大きな声で指摘。このタイミングで機動隊員は記者を放した」(8/21琉球新報)

 記者は高江橋に戻り写真撮影を再開したが、再び拘束され、機動隊員がつくる人垣の中に閉じ込められた。この間、高江橋の上では住民らの強制排除が続いていたが、記者はその現場を見ることができなかったという。沖縄タイムスの記者1人も、同じような経緯で取材を妨害された。

 沖縄県警は「記者証が腕ではなくカメラに付いていたので反対派と区別しづらかった」と釈明。「報道規制の意図はまったくない」としている。寝言は寝てから言え、と言いたい。暴力的弾圧を隠すために取材記者を遠ざけるのは、辺野古の海で海上保安庁がよく行っている当局の常とう手段ではないか。

安倍マリオ≠ナ隠ぺい

 高江では、全国各地から集結した機動隊による市民弾圧が連日続いている。8月22日には男女2人が負傷して緊急搬送された。ひとりは名護市在住の島袋文子さん(87)。記録映画などで有名になった「文子おばぁ」である。文子さんは機動隊員ともみ合いになり、右手小指を5針縫う傷を負ったという。

 600人もの機動隊を投入し、生活道路である県道を法的根拠もなく封鎖する。囲い込んだ市民を炎天下で2時間以上も身動きとれなくする。そして、取材中の記者を排除し弾圧の事実をなかったことにする―まさに、戒厳令下を思わせる人権圧殺というほかない。

 それなのに、大手メディアは高江で起きていることをほとんど報道しない。今回の記者排除事件も当初は完全黙殺だった。大きく取り上げたのは社説で扱った地方紙(信濃毎日新聞や高知新聞)と東京新聞(8/23付「こちら特報部」)のみ。朝日新聞や毎日新聞は8月25日にようやく後追い記事を出した。安倍御用メディアの読売新聞に至っては一切報じてない。

 高江で機動隊の暴力が市民を襲っている頃、リオ五輪の閉会式に出席した安倍晋三首相は「マリオ」パフォーマンスに興じていた。こんなことがあっていいのか。この男は市民の強制排除を命じた張本人だ。ロシアのプーチン(大統領)やトルコのエルドアン(同)の同類なのである。そんな弾圧魔を持ち上げる御用メディアの人権感覚は本当にどうかしている。

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 今回の沖縄地元2紙記者排除事件は、昨年6月に起きた自民党若手議員らによる報道圧力事件の延長線上にある。住民の目線で報道し、国家権力のコントロールに従わないメディアは「つぶさないといけない」というわけだ。安倍政権の横暴を許してはならない。        (M)

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