2016年09月09日発行 1443号

【韓国 青年ユニオン委員長 キム・ミンスさんに聞く(上) 組合員1300人の多くは非正規 求職・失業中も所得保障を】

 韓国の最低賃金闘争や国会議員選挙で注目された青年ユニオン。全交参加のために来日したキム・ミンス委員長(25歳)にインタビューした(7月31日)。


◆いつから青年ユニオンで活動しはじめたのですか。

 高校生の時から社会問題に関心がありました。卒業後、社会運動に関わりたくて、いろんな団体を訪ねようと。最初に行ったのが青年ユニオン、その時は設立準備委員会の頃でした。見学に行って、酒飲んで、すぐに入りました(笑)。そのころからコーヒーショップなどで2、3年アルバイトをしていました。

 アルバイトしながら関心を持ったのが、賃金未払い問題です。韓国には週休手当(週15時間以上働くすべての労働者に与えられる有給休日)があるのですが、きちんと支払われていません。当事者として問題提起しました。

◆青年ユニオンの現在の組合員数、雇用形態などは。

 組合員は1300人、サポート会員が500人で、ソウルの他、釜山、仁川、大邱、光州等各地方都市に支部があります。16歳から39歳までの年齢制限があります。毎月の組合費は最低賃金(時給)以上としています。

 雇用形態、業種はうーん…、とても変動的なんですね。何か月か前に会った時は働いていたのに、次に会った時は「今仕事を探している」とか。変動が大きいことが若者の特徴です。年齢や雇用形態の幅は年々広がっています。平均年齢は27歳。この歳は韓国では労働市場に入るころなんですね。それまでは大学にいたり短期アルバイトをしていたり。組合員はやはり非正規が多いです。業種はサービス業、IT開発、デザインなどが比較的多いです。男女比率は3対2ぐらいですね。

◆今重点的に取り組んでいる問題や相談は。

 一つは、最低賃金引き上げです(1441号掲載)。もう一つは社会保障の引き上げ。若者の就業準備期間が長くなっています。資格を身につけたり、学校に通ったり。その期間の社会的保障を求めています。また、失業手当の受給条件の緩和を求めています。受給条件は日本より厳しいんですね。求職・失業状態でも所得が保障されるセーフティネットを求めています。

 舞い込んでくる相談は、4、5年前は賃金未払いのような明白な労働基準法違反の事件が多かったのですが、近年は困難な事例、つまり解雇、パワハラ、いじめなどの相談が多くなっています。

 他には、使用者がその組合員の労働者性を認めない「一人親方」のような特殊雇用の例です。交渉を申し込むと、「いや、彼(女)はうちの労働者じゃない。社長だ」と。既存の法制度で保護されにくい例の相談を強化しようと努力しているところです。

 最近では、ロッテホテルで20人が解雇された事件がありました。昨年末、団体交渉で復職と未払賃金の支払いを会社に約束させました。

◆日本の若者も正規雇用が減り、様々な雇用形態が存在する中で、職場に労働組合を結成することが困難になっています。青年ユニオンの場合はどうでしょうか。

 特定企業をターゲットにして組合員を増やすという組織化は、2、3年前まで試みてきましたが最近はしていません。今は地域共同体をつくるという方向を強化しています。

 おっしゃるように職場には様々な雇用形態が存在し、若者の労働組合に対する否定的イメージは小さくなく、企業の中で組合をつくっていくことがなかなか難しい。むしろ退勤後集まって気軽に対話をしたり催しを持つ、そのような地域コミュニティ的な性格を強めていくことが重要ではないかと思っています。

 先のロッテホテルの場合、20人がみな組合員だったわけではありません。一人が偶然私たちの組合員だったのです。地域の集まりに顔を出し酒を飲んだりして交流していた組合員がある日ロッテホテルで解雇された。そこから青年ユニオンで社会問題にしていったんです。   《続く》

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