2016年09月16日発行 1444号

【沖縄 新基地阻止 高江で500人が早朝行動 初めて砂利搬入止める 国際世論(IUCN)も日米に勧告】

「今日搬入なし。勝った」

 8月末、沖縄県内最大の反戦平和運動団体「基地の県内移設に反対する県民会議」は、9月から毎週水曜日と土曜日の2日、東村高江のヘリパッド建設阻止のための一斉行動に取り組むことを幹事会で決定した。9月3日、一斉行動の初日、早朝6時前にはN1ゲート前に500人もの市民が結集、集会を開催した。

 一方、沖縄防衛局も通常午前8時すぎに県外からの警察・機動隊を配置していたが、この日は6時の集会に合わせるように大型車輌40台に機動隊員400人を動員、市民を排除する体制に入った。

 集会では、池宮城紀夫弁護士が「警察の行為はすべて法律に基づくが、ここでは法的根拠もなしにあらゆることが行われている。弁護団も連日警察の行動を監視し続ける」と力強く訴え。沖縄マスコミ労協副議長でQAB琉球朝日放送の大矢英代記者も「私たち沖縄マスコミ労協は、あらゆる戦争につながる原稿は書かない。約束します。戦争のためにカメラを回しません。戦争のためにペンは執りません。戦争のために輪転機を回しません。71年前、先輩たちが犯した過ちは2度と繰り返しません。そんな思いで記者たちは、日々現場に立っています。それを支えているのは沖縄のみなさんです。沖縄のマスコは県民のものです。民(たみ)≠フものです」と力を込めると市民から大きな拍手と歓声が続いた。

 N1ゲート前に駆け付けた市民の力が早朝の砂利搬入のダンプカー入構を阻止、集会後も200人が現場に残った。正午前、N1ゲートの南側に位置する高江橋付近に市民50人が集まり、南側からのダンプカーを阻止するため県道70号線の左側に乗用車を縦列駐車で固め、右側に市民が座り込みを開始。N1ゲートで待機していた市民も合流し一般車輌以外は橋を通行できないよう完全に封鎖した。

 午後3時すぎ、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが「日暮れまで作業時間はわずか。今日の搬入はない。勝ったぞー」と勝利宣言。7月22日のダンプカーによる搬入から初めての一斉行動を配置する中、この日ついに砂利搬入を止めることができた。

敵よりも一日長く闘う

 辺野古では、「勝つ方法は諦めないこと」が共通のスローガンになっていた。しかし、安倍政権・沖縄防衛局は執拗に手法を変え、辺野古新基地建設と高江ヘリパッド建設を強行し続けている。北部の西岸に位置する伊江島でも、米軍補助飛行場内に空軍のオスプレイCV22と垂直離着陸可能なステルス戦闘機F35にも対応できる強襲揚陸艦甲板仕様の着艦訓練場LHDの拡張工事を開始。沖縄本島北部全域を米軍の最新鋭の訓練施設として建設するために大規模な工事が始まっている。

 9月2日、高江では警察車両が工事作業員約10人を乗せてゲート前まで搬送。警察の責務を超えた、警察法にも反する異常な行為が堂々と行われている。さらに、建設を阻止する市民に邪魔されないように、陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47がN1建設現場までブルドーザーやショベルカーなどの重機と建設資材を空輸することが明らかになった。千葉県の自衛隊木更津駐屯地で資材運搬訓練をしていることが判明し、NHKはさっそく高江に自衛隊機資材搬入で使用と報じた。

 安倍政権はどんなことでも法律無視で強行する姿勢を変えず、諦めようとしない。最近、辺野古と高江で言われるのは、「諦めないこと」以上に勝つ方法は「敵よりも1日長く闘うこと」。闘いへの決意が改めて込められている。

IUCNが環境破壊ノー

 世界170か国以上の政府や政府機関、NGOで構成する国際自然保護連合(IUCN)は9月1日からのハワイでの第6回世界自然保護会議に先立ち、日米両政府に対して名護市辺野古を含む沖縄本島の外来種侵入防止対策の強化を求める勧告案を圧倒的多数で採択したことを公表した。票決は843票中、賛成539、反対26、棄権278。日米両政府は棄権に回った。

 新基地建設の埋め立てで政府は島外から最大1700万トンもの土砂を持ち込む。外来種が紛れ込み、沖縄固有の生態系を破壊する恐れが指摘されている。勧告の決議で、辺野古新基地建設計画の見直しを求める国際世論はさらに高まる。会議の一環としてホノルル市内で開催された「グローバル・グリーンアイランド・サミット」で、安慶田(あげだ)光男沖縄県副知事は「日本政府はIUCNの度重なる勧告を真摯に受け止め、辺野古の海を埋め立てる現行移設計画を変更してほしい」と述べ、環境面からも新基地建設に反対する沖縄県の立場を鮮明に示した。

 勧告に法的な拘束力はないが、日本自然保護協会の安部真理子主任研究員は「国際条約と同じ重みがある。日本政府は誠意と責任を持ち、勧告に従って、直ちに大量の土砂搬入を見直すか、勧告にあるすべてのことを実行すべきだ」と強調。国際世論が辺野古新基地建設は生態系を破壊すると警鐘を鳴らした。

 辺野古違法確認訴訟の判決は9月16日に予定される。県が提出した準備書面にも、埋め立ては環境破壊をもたらすことが明白と第三者委員会の結論を指摘している。裁判所は国際世論を真剣に受け止めなければならない。 (N)
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