2016年09月16日発行 1444号

【戦争法の違憲性あばく国賠訴訟 東京地裁で第1回弁論 全国では2700人が提訴】

 戦争法強行成立から1年を迎える9月2日、安保法制違憲訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で開かれた。

 東京地裁では、戦争法に対して現在2つの違憲訴訟が闘われている。平和的生存権・人格権・憲法改正決定権を侵害されたことに対する国家賠償請求訴訟と、戦争法に基づく自衛隊出動の差止請求訴訟。ともに4月26日、国を相手取って提訴された。

原告は457人

 この日開かれた国賠訴訟裁判は、457人の原告と621人の代理人が名を連ねる。陳述が相次いだ。「安保関連法に反対するママの会」の辻仁美さんは、沖縄・高江のヘリパッド建設現場の体験を引き合いに、「戦争ができる国では暴力が許され、担わせられるのは若者。大学生の半分が奨学金を借りる(貧困の)状況で、息子のような若者を使い本土でも数年先には同じ光景があるかもしれないと思うと身震いがした」と陳述。

 地元で米海軍横須賀基地撤去を闘い続ける新倉裕史さんは「イラク戦争など欧米諸国が繰り返してきた戦争がおびただしい中東の市民の犠牲を生み、テロの脅威を呼び込んでいる。安保法制の成立で米軍と自衛隊が一緒になって新たなテロにつながる軍事行動を起こさないか、心から心配だ」と述べた。

 東京大空襲で家族が死亡・負傷した河合節子さんが「何十年経とうとも消えることのない心の傷。亡くなった母の顔、小さかった弟たち、苦しんで苦しんで私を育ててくれた父のケロイドの残った面影。先人の犠牲を無にすることは絶対にやめてください」と言葉に詰まりながら訴え傍聴席にすすり泣きが広がった。

各地で提訴相次ぐ

 裁判後の報告集会では、国会前で連日シュプレヒコールを叫んだ菱山南帆子さんが「イラク戦争では香田証生さん、安倍政権下で後藤健二さんが殺された。集団的自衛権への抗議の焼身自殺を図った男性も2人いた。これらの人や、戦争で真っ先に犠牲となる障がい者の思いを背負って、戦争法を違憲とし、自衛隊の派遣を止める大きなうねりをつくりたい」。福田護弁護士は「国は、原告が侵害されたとする権利は具体性がなく棄却すべきという答弁だ。一人一人の具体的な権利侵害の証言を積み上げ、平和的生存権が具体的な権利であることをイラク派兵差止訴訟の名古屋高裁判決を深めて主張するなど、安保法制の違憲性を明らかにする」と決意を語った。次回の弁論は12月2日。

 東京地裁以外でも、福島・大阪・高知など全国9か所で提訴されており、今後札幌・仙台・横浜など少なくとも13か所で起こされる予定。全国で原告は2700人に達し、1000人近くの弁護士が代理人に就任している。

 自衛隊出動差止訴訟の東京地裁第1回期日は9月29日。



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