2016年09月30日発行 1446号

【辺野古訴訟で最悪の不当判決 沖縄の民意否定し国の主張を代弁 全国の連帯が新基地阻止の鍵】

不当判決に1500人の怒号

 「最悪の判決だ」「裁判所も県民を無視するのか」。裁判所前の城岳(じょうがく)公園は激しい怒りに包まれた。9月16日、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の判決報告集会には約1500人の市民が結集。県側代理人の弁護士から「考えうる中で最も悪い内容」と伝えられると怒号が飛び交った。

 今年3月4日、福岡高裁那覇支部は国と県に和解を勧告し合意。国は翁長雄志(おながたけし)知事への提訴を取り下げ、新基地建設のためのボーリング調査などは休止を余儀なくされた。

 ところが和解からわずか3日後の同7日、国は再び翁長知事の埋め立て承認取り消しの「是正指示」。和解協議で国が「辺野古が唯一の選択肢」の立場に固執し、国地方係争処理委が求めた協議にも応じないまま7月22日に国は「是正指示」に従わなかったとして翁長県知事の「不作為」を問う違法確認訴訟が起こした。その裁判の判決が9月16日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で言い渡された。

「裁判所は国の追認機関か」

 判決後、県庁で会見した翁長知事は「(裁判所が)政府の追認機関であることが明らかになり大変失望している」と述べ、「あぜん」との言葉を何度も繰り返した。それほどひどい判決内容だった。

 不当判決を要約する。

 「普天間飛行場の被害を除去するには本件施設(辺野古新基地)等を建設する以外にない」「海兵隊を県外移設できないとする国の判断は、戦後70年の経過や現在の世界・地域情勢から合理性があり尊重すべき」「県内に普天間飛行場の代替施設が必要である。(辺野古の)他に移転先は見当たらない」「地方公共団体に国防・外交に関する事項を判断する権限も組織体制も責任を負える立場もない」「(新基地建設は)日米安保と地位協定に基づくもので、憲法に反するとは言えない」。

 さらに、「(環境保全措置が十分かは)考慮すべき事項ではない」とし、国が主張する環境保全措置を事実上支持。「(辺野古新基地)建設に反対する民意には添わないとしても、普天間飛行場その他の基地負担の軽減を求める民意には反するとは言えない」「前知事の承認処分に裁量権の逸脱や乱用はなく、翁長知事の取り消し処分は違法」「是正指示に従わず相当期間を経過しており、知事の対応は違法」と断言した。

 高裁判決は国の主張を全面的に代弁する内容で全ページが埋められ、県幹部からは「まるで国の準備書面かと思った」と声があがった。司法がその役割と独立性を放棄し、三権分立を自ら否定したのだ。

あらゆる権限行使で

 翁長知事は会見で「地方自治を軽視し、県民の気持ちを踏みにじる、国に偏った判断で、対等協力の地方自治法改正の趣旨からもほど遠い内容。民意が一顧だにされないのが他の都道府県であり得るのか大変疑問だ。日本の地方自治・民主主義の在り方に困難をもたらすと危惧する」と強調。確定判決には従うとしたものの、「(埋め立て承認撤回も)十分にある」と今後も知事権限の行使によって辺野古新基地建設を阻止する決意を改めて示した。

 今後県は、高裁判決を不服として最高裁に9月23日までに上告する。最高裁が上告を棄却しない限り、10月以降審理が開始され、年末から年始には最高裁判決が出される予定だ。県が勝訴した場合、国による「是正指示」に従わなくてよいことになり、埋め立て承認「取り消し」の効力はそのまま維持される。県が敗訴した場合は、「是正指示」に従って承認「取り消し」を取り消すことになる。

 しかし、地方自治法では埋め立て承認の「取り消し」が無効にされても、埋め立て承認の「撤回」という処分方法も残されている。翁長知事が「撤回も十分にあり得る」と語った手法だ。「撤回」とは、埋め立て承認にさかのぼって「取り消す」ものではなく、承認後に生じた事情を理由とし、「撤回」したその時点で効力が発生するものだ。県は、埋め立て承認「撤回」に向けて、改めて辺野古新基地建設の是非を問う県民投票も視野に入れている。

 また、知事権限である設計概要(工法)を国が変更する場合には、県への新たな承認手続きと審査が必要となる。岩礁破砕許可が来年3月末に期限切れになることからサンゴ礁の移植許可を認めないこと、特定外来生物の侵入を防ぐための埋め立て土砂搬入の中止勧告も行える。加えて名護市長にも市長の許可が必要な多くの権限がある。

断念させるまで闘う

 高裁判決で敗訴したと言っても、最高裁審理があり、沖縄県と名護市、沖縄県民にはさまざまな闘いの手段が存在する。裁判所前で平和市民連絡会の上間芳子さんは「『判決に従うか』と繰り返し聞くなど裁判は初めから異常で、予想通りの結果だ。裁判がすべてではない。国が断念するまで闘うつもりだ」と怒りにで声を震わせた。法廷外には新基地を止める現場の粘り強い闘いがある。

 司法での闘いの舞台は最高裁のある東京に引き継がれる。沖縄県民の辺野古新基地建設阻止、高江ヘリパッド建設阻止の闘いに本土から連帯し、本土で闘い抜くことがいっそう重要となる。   (N)

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