2016年09月30日発行 1446号

【沖縄振興策は「基地とリンク」と脅し/訴訟・暴力と一体の兵糧攻め】

 8月末、各省庁の2017年度予算概算要求が発表された。内閣府所管の沖縄振興予算は3210億円で、2016年当初予算3350億円から140億円(4・2%)の大幅減額となった。安倍政権の戦争政策に抗する沖縄への恫喝(どうかつ)だ。

振興策は見返りではない

 沖縄振興策は、歴史的・地理的・社会的特殊性に由来する本土との格差是正を柱として施政権返還以来、創設されたものだ。

 沖縄は敗戦から1972年の施政権返還まで米軍統治下にあり、戦後復興から取り残されてきた(歴史的事情)。また、離島を多く抱えている(地理的事情)。日本ではまれな亜熱帯地域であること(自然的事情)。在日米軍基地の約75%が日本の国土の0・6%に過ぎない沖縄に集中しており、とりわけ沖縄本島では18・4%の面積を米軍基地が占め経済発展を阻害している(社会的要因)。現在では、「成長するアジアの玄関口」である沖縄の経済政策として位置づけられている。

 振興策は国から「交付金」として交付される。県が自由に使える地方交付税交付金とは異なり、事業別に交付される「ひも付き予算」だ。沖縄に限らず他の都道府県にも各々の特殊性や国の地域経済政策に応じた交付金は交付されている。

 沖縄振興策は、県民生活への基地被害への見返りではない。すくなくとも歴代政権は公式には基地の見返りにカネを出すという「リンク論」は言わなかった。

事後評価利用し冷遇

 政府が「リンク論」を公然と口にし始めたのは7月10日参院選以降だ。沖縄選挙区では島尻安伊子(あいこ)沖縄・北方担当大臣が新基地建設反対を掲げた伊波洋一候補に10万票以上の大差をつけられ落選。政府内には「島尻氏が大臣だったから官房長官は沖縄振興策に理解を示していた。落選したなら、もう沖縄に予算をつける義理はない」(7/17琉球新報)など「沖縄冷遇論」が上がっていた。8月4日以降、菅義偉(すがよしひで)官房長官は基地問題と振興策について「両方の課題を全体的に総合的に推進していく意味合いで、リンクしているのではないか」「工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然のことだ」と繰り返した。新内閣の鶴保庸介(つるほ)沖縄・北方大臣も「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」、稲田朋美防衛大臣も「基地問題と沖縄振興をリンクさせることは、官房長官が述べられた通りだ」と述べている。

 概算要求では、沖縄県側にとって使途の自由度が高い「沖縄振興一括交付金」が237億円減額された。逆に国直轄事業や補助事業などの公共事業費は増えている。

 減額された「一括交付金」は、県側が事業を計画しその成果を事後評価するというもの。菅は「辺野古移設を進めたい。工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然」、鶴保は「政府による沖縄振興の目的には返還された基地の跡地利用はもとより、基地があることによっての基地負担軽減も含まれている」と説明した。事後評価で政府が求める進捗がなければ予算が減るのは当然であるとする。

政府に従わなければ削減

 だが、1995年の日米合意以降普天間基地は1ミリも動いていない。県民が反対しているにもかかわらず「辺野古移設が唯一」として安倍政権がまともに協議に応じず、強引に進めているのが原因だ。跡地利用など進むはずがない。政府方針の辺野古移設を受け入れなければ振興策は削減し、受け入れれば振興策は増額する≠ニ言っているに等しい。

 振興予算の中には「沖縄・地域安全パトロール隊」8・7億円が計上されている。これは、4月の女性殺害事件をうけ米軍兵士の犯罪抑止として防衛局職員などがパトロールするというものだが、現実には、高江のヘリパッド反対運動の市民監視員として動員されている。振興策ですら沖縄への恫喝に利用している。

 政府方針に従わなければ、県民を暴力で弾圧し、県に対しては訴訟を連発した挙句、交付金カットで兵糧攻め。権力を総動員し、沖縄に襲いかかっているのが戦争政策を推進する安倍政権だ。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS