2016年09月30日発行 1446号

【住宅打ち切り反対福島県交渉(下)/避難者無視の「支援策」】

 前号に続き、9月6日に行われた、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)、原訴連(原発被害者訴訟原告団全国連絡会)と福島県との第3回交渉で追及された主な問題点を紹介する。

 交渉での論点の第3は、民間家賃補助の2年期限、補助額、引っ越し費用の有無などの問題が放置されたまま、住宅提供打ち切りに伴う「優先入居」などの受付が開始されようとしていることだ。

 福島県は、家賃補助期間を2年間としたことについて、避難者の生活状況をもとにしたシミュレーションによるものではなく、あくまで県側で想定した希望、としている。

 これに対し、避難者から「2年後に『経済的自立』ができない場合でも切り捨てるのか」「収入算定が2分の1とされる母子避難家庭が入居できたとしても、子ども被災者支援法の対象から外されて(夫を合わせた一家の)合算になり、収入要件をオーバーしたらまた追い出されるのか」との不安がぶつけられた。県当局は肯定も否定もできず、口をつぐんでしまった。

 県の補助では引っ越し費用は帰還者にしか支払われない。避難先にとどまる避難者は「今の住居を変われば必ず修繕費用と引っ越し費用がかかる。引っ越し自体が困難」「保育園にも入れない子どもがいて、仕事ができないので(大きな出費に備えた)お金を貯めることができない」「引っ越し先が民間でなく公営住宅から公営住宅でも初期費用はかかるが補助がないのできつい」など、訴えた。

 今回の打ち切りで、引っ越しに伴う多額の費用が生じる世帯が多い。都会の家賃相場が福島県基準(約6万円平均)とかけ離れている事実も認めながら、地域別補助額も検討してこなかった問題も残されている。

 優先入居枠で公営住宅に入った避難者がその後収入要件を超える所得を得た場合、退去させられるのか。「せっかく落ち着いたかと思ったらすぐ退去だと全く先が見えなくなる」と不安でいっぱいだ。

財源の問題ではない

 民間家賃補助にかかわる県の予算は、現在想定されている2千世帯を対象にすると2年間で最大15億円、1年で7・5億円。これを5千世帯に拡大しても、2年間約38億円、1年だと19億円だ。福島県の除染関係費用2545億円と比較しても微々たる額であり、福島事故に伴う原子力災害復興関係経費の未執行分だけで8900億円にのぼる(会計検査院16年4月発表、14年度末分)。財源が支援策の抜本的見直しの壁となっているのではない。

 交渉では、8月25日の新潟県・山形県・福島県3県知事会で、内堀福島県知事に対し住宅の延長、支援策の強化が要請された点も取り上げられた。福島県が新潟・山形両県知事の要請を真摯に受け止め文書で回答するよう、避難当事者も強く求めた。次回第4回交渉は、10月24日に予定されている。詰めるべき課題は山積している。

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