2016年09月30日発行 1446号

【どくしょ室/女・オルグ記 女性の自律と労働組合運動のすそ野を広げて/伍賀偕子著 ドメス出版 1400円+税/当事者運動を組織した営み】

 本書のタイトルを見て、「オルグ」とは何だろうかと疑問をもつ人もいるだろう。「オルグ」とは、「オルガナイザー」の略であり、「組織者」の意味である。

 本書の舞台、労働組合の全国組織であった総評(日本労働組合総評議会)においては、「中小企業労働運動や争議にともなう多くの困難に立ち向かい、日夜労働者を組織化する不屈の精神と終わりなき地道な活動」があった。そのなかでも、「主婦の会オルグ」は、1960年に誕生した総評組合員の家族(配偶者)を対象にした「総評主婦の会」の組織化に携わった。

 本書のねらいは、1950年代から80年代に「主婦」が「夫への従属的な位置をどのように脱皮して自律を求め、国民的運動の一翼を担うようになったのかの『総評主婦の会』の歩み、そして、その過程において『主婦の会オルグ』がどのように主婦らに接し、活動を通して『女性の自律と解放』を求めたか、その過程でオルグ自身も目覚め鍛えられていったか」を「歴史に刻み、労働運動フェミニズムの視点から」検証したいということである。総評の運動史には書かれていないのである。

 前半は、筆者を含む7人の「主婦の会オルグ」の実践が記されている。当時のオルグたちに、手紙や電話、そして自宅を訪ね、取材を重ねた筆者からは、歴史に埋もれさせまいとする熱いおもいが伝わってくる。女・オルグたちの、労働運動のすそ野を広げ、何が問題なのかをとらえ持ち場でできることをする日常的な地道な活動があったのである。彼女たちのような先輩がいたことは、社会的な活動をする者にとって、たいへん参考になるし、励みになる。

 後半は、女・オルグたちが活躍した「総評主婦の会」の結成、運動内容と果たした役割が記されている。

 「当初は、労働組合の支援・協力組織として」の出発だったが、「暮らしのなかから生まれる要求を、企業の枠を越えて地域に根ざして」全国運動として展開した。その一部ではあるが、「合理化に反対し、いのちを守る」「物価値上げ反対」「共同購入」「合成洗剤追放」等々の運動がある。

 特筆すべきは、主婦たちが劣悪な条件で内職・パートをしているなかで、内職・パートを組織化し、「内職・パート大会」を開催するに至った取り組みである。「働く主婦」として、労働組合支援の立場から、自らの要求と権利を主張し「当事者運動の主体」へと成長していったのである。現在、非正規労働者たちが闘いに立ち上がっている、その前の時代の組織化である。

 本書は、歴史の記録・資料としてもとても貴重で、ぜひ多くの方に読んで欲しい。私自身も彼女たちの志を継ぐ者としてがんばっていきたい。

(OPEN<平和と平等を拓く女たちの絆>・M)
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