2016年09月30日発行 1446号

【沖縄と国会 怒りと闘いを結ぼう】

那覇 不当判決に怒り爆発

 沖縄県知事に対する承認取り消し違法確認訴訟判決の9月16日。福岡高裁那覇支部前と道を挟んだ公園入口付近に、多くの市民が判決内容を確かめるために集まっている。沖縄中北部からの参加を示す旗が目立つ。国頭(くにがみ)村島ぐるみ会議、うるま市具志川9条の会、沖教組中部支部。予定時刻の14時、結果は伝わってこない。25分遅れて集会は始まった。この遅れに、さまざまな思いがめぐる。「万が一にも…」

 司会者のアナウンスがあった。「不当判決が出たようです」。弁護団の到着より早く知らされた。会場には「ああ〜あ」とため息が漏れた。官邸人事といわれる多見谷寿郎裁判長。わずかな期待は消し飛び、怒りの声にかわった。

 報告集会は辺野古・高江現地で闘う団体の決意から始まった。ヘリ基地反対協・安次富(あしとみ)浩代表は「腹の底から怒りを感じる。この間、安倍政権は沖縄の声を一度も聞こうとしなかった。警察庁が都府県の警察を使い住民の運動を力で圧殺する。国家警察となっている。民主主義、地方自治を沖縄を通して逆行させている。だが、辺野古の闘い、高江の闘いは決して負けない。正義は民衆の側にある」と怒りを爆発させた。

各地域から立ち向かう

 高江の地元、北部地域島ぐるみ会議代表の島袋義久さんは「裁判官に多少期待もしたが、この通りの判決だ。立ち向かうには団結するしかない。現地に行けない人も、思いを一つにするために各地域で闘う必要がある。大宜味(おおぎみ)村では朝立ちを行っている。闘うしかない」と団結を訴えた。

 集会には沖縄選出国会議員が顔をそろえ、抗議の声をあげた。参院選で初選出となった伊波洋一議員は普天間基地がある宜野湾市の元市長でもあった。「埋め立て承認取り消しは、自己決定権の金字塔だ。普天間飛行場の安全対策を一切せず、オスプレイまで導入する。危険性の責任は政府にある。爆音訴訟で証言した内容が確認された。へこたれずに頑張ろう」

 最後は団結頑張ろう。音頭を取ったのは、シールズ琉球の玉城愛さん。「沖縄を安保観点からしか見れない幼稚な政府」と批判し、こぶしを突き挙げた。(T)


高江 300人で工事止める

 不当判決の翌9月17日は土曜日。毎週水曜、土曜の高江大行動日にあたる。ゲート前で指揮を執る山城博治平和運動センター議長は迷った。7月22日の機動隊による暴力的弾圧が頭をよぎる。その後橋上で車を使い工事車両を止める行動を行ってきた。だが、それでは不当判決に怒る県民の気持ちに合わないのではないか。早朝5時、機動隊の動向を見た。N1ゲート前に座り込み、集会を開くことを決めた。「沖縄は怒っている。怒りの行動を正々堂々と見せつけよう。たとえ機動隊にごぼう抜きにされようとも、県民の気概を示すことが大切だ」

 空はまだ暗い。ゲート前にはセンターラインに沿ってコーンが置かれている。機動隊は、車両の駐車スペースを確保しようと200b以上にわたって1車線を囲い込んだ。品川、横浜、なにわなどのナンバーをつけた機動隊車両がコーンの中にいる。

 6時前。市民の車が集まり始める。路側に整然と縦列駐車を行う。大阪府警の機動隊員が阻止にやってきた。「一般車が通れないやろ」「ここには駐車するな」と運転手を威嚇する。2日前、刑法の往来妨害罪を初めて適用し、逮捕するという暴挙に出ている。緊迫した瞬間だ。山城さんが一喝する。「県民は怒っている。今日はたくさんの市民がやってくる。ここで集会をする。一般車の妨害をしているのは機動隊の車だろう。撤退せよ」

 機動隊車、警備員の通勤車を含め車列は1`近くに及んだ。

8時間に及んだ集会

 空はいつしか明るくなった。台風の影響が出れば豪雨も覚悟だ。7時前、福島みずほ参議院議員が到着。集会が始まる。ゲート前に板を引いて座り込んだ市民はすでに100人を超えている。

 福島議員があいさつした。「高江は無法地帯。どこよりも弾圧されている」と防衛省の違法行為を挙げた。「なぜ防衛局が権限もないのに県道上のテントを壊して持ち去されるのか。自衛隊ヘリがなぜ重機を運べるのか。航空局の許可を示すことができない。高江では夜10時以降にヘリが飛んでいることが騒音資料でわかった。勝手な森林伐採に林野庁から遺憾文書も出ている」。「高江の闘いは民主主義の実現に最も努力している」とエールを送った。

 平和市民連絡会の北上田毅さんは新たな違法行為を明らかにした。工事の遅れに焦る防衛局が工期短縮のため、新たな工事道路用に森林伐採を違法に始めた。県の赤土防止条例の手続きをしていないという。市民の闘いが確実に政府を追いつめている。

 集会は7時前から15時まで、休憩を挟みながら、歌ありダンスあり、8時間に及んだ。ゲート前には300人近い市民が集まった。全国からの募金により、水、おにぎりが提供されている。「支援に感謝したい。募金はすべてこの闘いに使う。足らなくなれば、また呼びかける」と山城さん。

 工事用砕石の積み込み場を監視するメンバーからはダンプの出庫情報は来ていない。この日の行動は完全に工事を止めた。「大成功だ」と山城さんは満面に笑みを浮かべた。

          (T)

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