2016年11月11日発行 1452号

【みるよむ(417)2016年10月29日配信 イラク平和テレビ局in Japan 湿地帯の世界遺産登録を妨害するイラク政府】

 イラク南部では、チグリス・ユーフラテス川流域に自然豊かな湿地帯が広がっている。ところが今、国連がこの湿地帯を世界遺産登録リストから削除する動きをしている。2016年8月、サナテレビはこの問題についてイラク市民にインタビューを行った。

 南部の有名な湿地帯が世界遺産登録リストに上がっていることは、サナテレビの「イラクの湿地帯を世界遺産に」(7月16日配信)で、市民の期待感も交えながらお伝えした。数か月もたたないうちに状況が一変したのはなぜか。

 インタビュアーのサジャド・サリームさんが報告する。ディカール州政府が、湿地帯を訪れるツアー客に「女性の顔を覆うものをかけろ」「男女を分離しろ」などと要求。それが原因で、国連がリストからはずすことを検討しているという。

 イラクの湿地帯を訪れるツアーの場面がある。小さなボートで湿地帯を巡り、豊かな自然の中に分け入ってとても気分がよさそうだ。こんな所で、なぜ、女性が顔を覆うベールをまとったり、乗船まで男女別にしなければならないのか。全く理解に苦しむ。

 メディア関係者の男性は、州当局が湿地帯の世界遺産登録を「男女や民族の別、男女間の交際などをあげて妨害をしている」と厳しく批判する。そして「イラクの湿地帯を発展させたい」と訴えている。

「文化からほど遠い」

 市民活動家も「外国人が入国するのを妨害する束縛や強制となる法律の押しつけに明け暮れるイラク政府は、文化からはほど遠い」と痛烈に批判する。

 ある労働者は「ディカール州の湿地帯を訪れる海外のツアー団に嫌がらせが行われている」と指摘。ディカール州知事に「あなたの政党の利益に奉仕するために働くのはもうたくさんだ」と怒りをぶつける。

 イラクのアバディ政権は、市民の怒りを抑え込むために社会全体にイスラム主義の教義を押しつける政策を進めている。湿地帯のツアー客に対する抑圧もその政策の一つなのだ。

 安倍政権も、グローバル資本の利益のためには抑圧や差別を平気で行う点では同じだ。私たちがイラクの市民と連帯する必要を再確認できる映像だ。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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