2016年11月11日発行 1452号

【高速増殖炉「もんじゅ」廃炉 核燃料サイクルは破綻 政府は原発からの撤退を】

 福井県敦賀市で、日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖炉「もんじゅ」について、政府は9月、「廃炉の方向で年内に結論を出す」ことを決めた。再稼働には5千億円の費用がかかる一方、廃炉なら3千億円ですむとの試算結果も明らかにされており、廃炉の結論は変わらない見込みだ。20年間、1ワットも発電せず、血税1兆円をドブに捨てた「悪夢の原子炉」が終わることになる。

後継事業者見つからず

 2015年11月、原子力規制委員会は、1万点を超す施設・設備の点検漏れが発覚した原子力機構がもんじゅの運転主体にふさわしくないとして、半年以内に新たな事業者を見つけるよう求める勧告を行った。

 これに対し、原子力機構を所管する文部科学省は、検討会を設けて新たなもんじゅの運営主体を探してきた。電力業界にも協力を求めたが断られ、規制委が要求する半年以内の後継事業者探しは失敗に終わった。電力会社も民間企業。コストだけがかかり、発電もできないようなお荷物施設を引き受けるはずがなく、廃炉は当然の結果だ。

「次」を画策も失敗確実

 政府は、もんじゅを廃炉とする一方、なおも核燃料サイクル(注)を維持するため、新たな「高速炉」導入を画策している。フランスで計画段階にある高速炉「ASTRID(アストリッド)」計画に参加しようというのだ。

 だが、ASTRIDはフランスでも「2030年頃に運転開始を目指す」としているだけ。基本設計が終わる2019年度までしか予算が確保されておらず、その後は不明だ。

 ASTRIDももんじゅ同様、冷却剤に液体ナトリウムを使う。空気に触れるだけで燃焼する液体ナトリウム原子炉であり、危険性は同じだ。もんじゅと異なり高速「増殖」炉でないASTRIDはプルトニウムの増殖もできない。日本政府がもんじゅ導入時に説明してきた「エネルギーを無限に増殖できる夢の原子炉」との前提も崩壊している。

 これとは別に、政府は茨城県にある休止中の高速実験炉「常陽」の再開も計画している。だが、この「常陽」も運営は原子力機構だ。もんじゅの施設・設備の点検すらまともにできず、規制委からも「退場勧告」された原子力機構に運転資格があるとは思えない。

 そもそも「常陽」の施設自体、初の臨界に達した1977年から来年で40年になる。福島原発事故後に作られた40年ルールに従えば廃炉になるべき老朽原子炉だ。このような老朽炉に、もんじゅ同様ナトリウム冷却剤を詰めて運転するなど危険きわまりない。

 新高速炉計画は、もんじゅと危険性が変わらず、実現可能性も不明なものに再び税金を投じるだけで終わることが確実である。無駄で危険な高速炉開発は断念すべきだ。

 政府にもんじゅの失敗を検証させ、責任をとらせる必要もある。2010〜14年に内閣府原子力委員会委員長代理を務めた鈴木達治カ(長崎大教授)は、原発推進の経産省ではなく、国会など別の場所に独立した組織を作り、核燃料サイクル計画の見直し・検証をすべきと提言している。原子力ムラの中心人物でさえ、核燃料サイクルの見直し・検証を求めているのだ。

核燃料サイクル完全崩壊

 もんじゅと並んで核燃料サイクルの中心を占めるはずの核燃料再処理工場(青森県六ヶ所村)も崩壊が決定的になっている。2015年11月とされていた再処理工場、また17年10月完成予定のMOX(ウラン・プルトニウム混合)燃料工場はまた完成時期が延期された。延期は23回目だ。

 福島原発事故後の新規制基準に合わせ、規制委が求めている追加の安全対策工事のため、現状でも2兆4千億円とされている建設費がさらに増える可能性が高まっている。そもそもMOX燃料はもんじゅでの燃焼、再処理工場はもんじゅでの使用済み燃料の再処理を目的としており、もんじゅが破たんした以上、不要な施設だ。

 再処理事業が失敗したときは使用済み核燃料を施設外に搬出しなければならないとする国、県、日本原燃(再処理施設の事業者)の三者覚書(1998年締結)もある。再処理を中止に追い込めば、使用済み核燃料の行き場がなくなり、日本中の原発が稼働できなくなる。高レベル放射性廃棄物の処分地も決まらない。

 政府は、核燃料サイクルの破たんを認め、直ちに原発からの撤退を決断すべきだ。

(注)核燃料サイクル 原発の使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び原発で利用するもの



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