2016年11月11日発行 1452号

【住宅提供を打ち切らないで/避難当事者が福島県交渉・国会議員要請】

 区域外避難者の住宅無償提供打ち切りが5か月後に迫ってきた。ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)など当事者団体による福島県交渉が10月24日、福島市で行われた。

 福島県の発表では、区域外避難者は約9720世帯(民間借り上げ7410世帯、公営住宅980世帯など)で、公的住宅の確保見込み数は1140戸。県は民間家賃補助と公営住宅の確保を支援策の柱にしているが、希望者の数の公営住宅確保には程遠い。

交渉で一部前進

 交渉のポイントは、東京300戸・神奈川80戸など優先入居枠が提供されたものの、多くが中心地から遠い上に世帯要件が壁となって「今の住宅に住み続けたい」という要求が満たされないこと。「母子避難した。避難当時は中学生だった子も現在は20歳を超え、応募すらできない」「3世代5人で避難した。うち2人は世帯分離したら応募資格を得られるが、他の人はダメと言われた」「高い家賃の雇用促進住宅にいる世帯は都営住宅に応募できない」など、路頭に迷う実態を訴えた。

 県避難者生活拠点課は「世帯要件の緩和についてどういった方法があるか。7月末の生活再建検討会議の場でも他自治体に頼んだが、改めて調整する」と答えた。

 抽選を経ない「特定入居」の確保も議論となった。国土交通省住宅局住宅総合整備課から、被災者として一時入居した者は条件を満たせば災害による特定入居として正式入居させるとの通知(2011年3月12日付)が出されている。「区域外避難者も、現在帰る家のない者は特定入居とみなして入居を保証せよ」との追及に、「福島県の県営住宅については特定入居として取り扱っている。国交省からも了解を得ている」としながら、他自治体に福島県から要請するよう求めたのに対しては「県の対応は伝えている」との説明にとどまった。

 交渉後、茨城・埼玉・神奈川3県で280戸の雇用促進住宅提供、東京都で一般賃貸住宅の入居資格要件緩和が発表された。運動の影響ではある。しかし、雇用促進住宅は築35年以上の郊外の物件ばかりで、今後民間の買い手がないと取り壊される代物だ。都の一般賃貸住宅は、応募条件から「持ち家がある」が外され、収入基準(家賃の4倍)の算定基礎から福島県の家賃補助分が差し引かれるが、ほとんどが10万円以上の物件で民間賃貸と変わらない。小手先の対応でなく、世帯要件・収入要件を外した公営住宅入居の保障が求められる。

 次回の交渉は12月。ひだんれんは、福島県議会が開かれる直前の11月28日から12月4日まで県庁前で避難当事者を中心に朝夕のスタンディングアピール行動を行う。4日午後には大規模な集会・デモを予定している。

20万筆の署名託す

 10月26日には参院議員会館で、「原発事故被害者の救済を求める全国運動」呼びかけの「住宅無償提供継続、避難指示解除・賠償打ち切り方針撤回、健診充実・拡大と医療費減免」を求める請願署名提出集会を開催。全国から参加した避難当事者が約20万筆の署名を民進・共産・社民・自由各党議員に手渡した。

 集会で、北海道に避難した宍戸隆子さんは「雇用促進住宅の場合、生活困窮者ほど月収要件を満たせず住み続けられない。北海道と札幌市に支援を求める請願書・要望書を提出。道への請願は全会派一致で採択され、自主避難者への支援継続が決まった。札幌市長とも直接面会でき、申し込み枠新設の約束をもらった。道議会の議事課はとても手助けしてくれ、請願採択に『よかったですね』と。行政からそんな暖かい言葉をかけられたのは初めて。同じことがどうして国と福島県にはできないのか」と話した。

 同日夜、議員会館前に初めて約20人の避難者が結集した。当事者の声を国会に届けようと、「原発事故被害者とともに立ち上がろう」のプラカードをかざし、一人ひとりがマイクを握った。





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