2016年11月25日発行 1454号

【みる…よむ…サナテレビ(419)/2016年11月12日配信 イラク平和テレビ局in Japan/モスルはすべてのイラク市民のものだ】

 2016年10月から、「イスラム国」(ISIS)によって占領されたモスルの「奪還」作戦が進んでいる。サナテレビは、現在のモスルの事態をイラク市民がどのように見ているのか、メディア関係者にインタビューした。

 イラク軍、米国軍、クルド人部隊、シーア派私兵などが攻撃を強化し、11月初め段階ではモスル市の一部に入って戦闘中という。モスルから「イスラム国」が一掃されるのは、数か月かかるかも知れないが、ほぼ確実な状況と伝えられる。

 しかし、問題はこれで終わるわけではない。何よりもイラク市民の被害が甚大となっている。この数週間だけでも、「イスラム国」が市民300人をどこかに連れ去り、安否は不明。米軍をはじめとする「有志」連合軍はモスルとその周辺に無差別爆撃を続けている。アムネスティ・インターナショナルは、イラク警察の制服を着た集団が10人の男性と少年1人を拷問にかけ、何人かを銃殺したと報告している。戦闘の結果、難民が100万人近く出るのではないかと懸念されている。

 モスル攻防戦に関与している「イスラム国」、シーア派主導のアバディ政権、シーア派私兵の訓練や資金を提供しているイランやその背後にいるロシア、「イスラム国」を支えてきたスンニ派勢力のサウジアラビアやカタール、クルド勢力、モスルに近いクルド地域に出兵したトルコ―。すべて石油を中心とした利権獲得のために市民の膨大な命を犠牲にして争っている。

 番組では市民が意見を表明する。あるマスメディア関係者は「キリスト教徒も、スンニ派も、シーア派も、サービア教徒も住んでいます。モスルはイラクの街です」と訴える。

 もう一人は「モスルは売り物なんかでは絶対にない。モスルはイラク国民の心と目の中にある」と語る。そして「宗派主義はニネベ州(モスルはニネベ州州都)の州界線上で打ちのめされる」と断言する。

 イラク市民は、米国、トルコ、クルド勢力などがイラク国内に分断を持ち込もうとしていることに反対し、すべての民族・宗派に関係なく統一した、そして平和で民主的なイラクを求めることをはっきりと表明している。日本からもこのような市民の闘いと連帯したい。

(イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)



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