2016年12月02日発行 1455号

【沖縄・高江ヘリパッド阻止 工事完了―返還式典へ暴走 正念場に一斉行動週3日へ】

連綿と続く基地被害

 戦後71年間、沖縄は米軍基地被害の苦しみが連綿と続く。

 11月19日、米軍属女性暴行殺人事件で元米海兵隊員が逮捕されてから半年が経った。日米地位協定の抜本的改定を求める声が高まったが、結局国は運用見直しで収束を図ろうとする。うるま市の被害女性の父親が17日、手記を発表した。「この事件を最後に米軍人、軍属の事件がなくなり、もうこれ以上私たちのような苦しみ、悲しみを受ける人がいなくなるよう願います。それは沖縄に米軍基地があるがゆえに起こることです。一日も早い基地の撤去を県民として願っています」

 同日、米軍普天間飛行場の実質的な飛行差し止めなどを求める第2次普天間爆音訴訟で、那覇地裁沖縄支部は判決を言い渡した。藤倉徹也裁判長は飛行差し止めを棄却。違憲確認も退け、オスプレイ被害も認めなかった。爆音による苦しみ、墜落の恐怖、オスプレイの轟音による体調異変など住民の訴えを一切かえりみなかった。

「式典」に向け夜間工事

 米軍北部訓練場のヘリパッド建設完了へ、安倍政権はなりふりかまわず最後の手段に出てきた。夜間突貫工事だ。

 11月16日夜、静かな高江の森に午後11時をまわっても重機の騒音と作業員の声が響く。投光器のライトアップが希少生物の生態系を破壊する。午前3時にダンプカーが県道70号線を走り回り、重機のキャタピラー音が床と壁を振動させ、住民の睡眠を妨害する。

 政府が工事を急ぐのは、米軍北部訓練場の半分にあたる4千ヘクタールの返還を12月22日に行い、同20日には那覇市内でキャロライン・ケネディ駐日大使を迎えた「返還式典」を予定しているからだ。

 だが、「宇嘉川河口からヘリパッドG地区に続く訓練道やH地区、N1地区のヘリパッドも式典までに完成する見通しはない」と現地で阻止行動に取り組む元土木技術者は語る。とにかく「返還式典」を行って、1972年の本土復帰後最大の米軍基地返還を安倍政権が実現させたという「実績」を国内外に宣伝する狙いだ。そして、来春に予定される辺野古訴訟上告審で「勝訴判決」を得て、直ちに辺野古工事再開を強行する。その露払いとして北部訓練場「返還式典」がある。そもそも半分しか返還しないのに、「返還式典」を挙行することそのものが問題だ。

憲法無視の弾圧強化

 安倍政権は、抗議する市民への弾圧をさらにエスカレートさせている。11月17日、沖縄防衛局がヘリパッド建設反対のため米軍提供区域に入った市民らの写真などを説明資料として作成していたことがわかった。そこでは、建設工法の大幅変更、大量の森林伐採や違法作業など自分たちの違法行為や条例違反には一切触れず、反対運動をする市民らを「違法かつ妨害事例」と強調。「市民が自然破壊」「防衛局管理地に無許可テント占有」と事実とは異なることが堂々と記載され、ネット右翼のフェイスブックに写真資料を提供し流布させた。

 さらに市民運動のリーダー、山城博治さん(不当勾留中)が有刺鉄線をペンチで切断する写真(市民に深い切傷を負わせる危険性があるため1本をカットした)を9枚も掲載するなど、刑の確定もしていない裁判前に公表するという常軌を逸した暴挙だ。肖像権、個人のプライバシーが侵害され、基地建設反対活動はじめ憲法が保障する表現の自由の蹂躙(じゅうりん)だ。ヘリパッド建設工事に反対するものに違法行為のレッテルを貼り、県民を分断して闘いを弱体化させることを狙う。同日、高江現場での不当逮捕・勾留はついに6名を超えた。

防衛局に意見書突きつける

 翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が立ち上がった。

 20年前、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意で北部訓練場の半分の返還に伴いヘリパッド6か所の移設に合意した経緯がある沖縄県は、オスプレイ配備には遺憾を表明していたが、ヘリパッド建設については表立った反対はしてこなかった。

 しかし、11月16日、県は33項目にわたる「北部訓練場の過半の返還に関する実施計画の案に対する知事意見書」を沖縄防衛局に突きつけた。SACO合意にはなかったオスプレイ配備についての環境影響評価のやり直し、ノグチゲラ等の希少生物への環境保全策の徹底、県民の水がめである福地ダムなどの水質検査の厳正な対応、返還後のダイオキシンをはじめとする有害物質の土壌・水質汚染対策などを網羅し、迅速な立ち入り調査要求を求めた。

 過去の米軍施設返還では、キャンプ瑞慶覧(ずけらん)の西普天間住宅地区の際は知事意見書から返還までに1年2か月、キャンプ・ハンセン一部の際は5か月が必要だった。沖縄防衛局は、知事意見書をふまえて返還実施計画を作成しなければならないが、今回のように12月22日の「返還日」以降に返還実施計画を策定すること自体が異常な事態だ。

一斉行動を月水土に拡大

 まさに形だけの「返還式典」画策。県民は1日でも1時間でもヘリパッド建設作業を止め年内建設を阻止しようとさらなる闘いに起ちあがった。

 県内最大の平和運動団体「基地の県内移設に反対する県民会議」は、これまで毎週水・土曜日の午前6時からN1ゲート前で一斉行動―座り込み集会に取り組んできた。この11月21日からは行動日に月曜日も加える。

 「ヘリパッドいらない住民の会」の儀保昇さんは「12月が正念場、闘いは最後の局面に来ている」と語った。本土からヘリパッド建設年内阻止の闘いに立ち上がることが、現地で連日闘う沖縄県民に応えることになる。いま闘いのときだ。

     (N)



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