2016年12月09日発行 1456号

【内戦状態の南スーダンに派兵 殺し殺される駆けつけ警護 自衛隊は直ちに撤退だ】

 安倍政権は11月20日、南スーダンPKO(国連平和維持活動)第11次派兵の第一陣として、陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊中心の部隊130人を派兵した。残る220人も順次派兵し、「駆けつけ警護」「宿営地共同防護」の新任務は、12月12日から実施可能としている。内戦状態の南スーダンで戦闘によって憲法9条否定の実態をつくり出し、憲法改悪の突破口にさせてはならない。自衛隊をただちに撤退させよう。

「邦人保護」のごまかし

 政府の「新任務に関する基本的考え方」は、「駆けつけ警護」について、「比較的落ち着いている首都ジュバ及びその近郊」に活動を限定し、「応急的かつ一時的措置」で「他国軍の警護は想定していない」とする。また、ジュバには現在、約20人の日本人が滞在していて「邦人の安全に資する」と強調。あたかも警護対象は日本人のみのように描くことで、世論の支持をとりつけようと狙う。

 だが、これらは全くのごまかしだ。戦争法を構成する改定PKO法は、「駆けつけ警護」について「国連平和維持活動」「人道的な国際救援活動」などを行う「活動関係者」を保護すると明記。警護対象も使用する武器も限定されない。PKO部隊の他国軍兵士やNGO関係者などが襲撃された際、自衛隊が武器を持って現場に駆けつけ救助するのが「駆けつけ警護」のそもそもの任務であり、警護対象は日本人だけに限られない。他国軍の警護についても、稲田防衛相自身「(他国軍警護を)排除するものではない」(11/1記者会見)と明言する。安倍政権が閣議決定した「実施計画」も、警護対象を限定するとはしていない。

深刻化する内戦

 南スーダンは内戦状態だ。

 国連特別調査報告書(11/1)によると、300人以上の死者を出した7月10日の大規模戦闘では、大砲や戦車、攻撃ヘリが総動員され、中国のPKO隊員2人も死亡した。同報告書は、この戦闘で「不安定な和平合意は崩壊した」と明記。稲田防衛相が訪問した10月8日当日には、ジュバ近郊で市民21人が死亡する武装襲撃が発生。スーダン・トリビューン紙によるとジュバで11月6日、自衛隊の宿営地からわずか5キロのサッカー場で銃撃により11人が死亡し、7日には手榴弾で10人以上負傷した。さらに、反政府勢力はジュバのある中央エクアトリア州のモロボ郡など国内3か所を支配下においた(11/19同紙)という。南スーダンは、首都も決して「平穏」などと言えるものではではない。まさに内戦なのだ。

 しかも、国連報告書は、7月の戦闘での国連施設などへの攻撃に政府軍が関与したことも指摘している。これは「政府軍は国連部隊に応戦した」と交戦を認めた南スーダン政府のルエス情報相の証言(11/4朝日)とも一致する。さらに、アムネスティ・インターナショナル報告書(10月公表)では、7月の大規模な戦闘は政府軍による計画的な殺害と無差別攻撃、強姦、大規模な略奪だったと指摘。現地で「駆けつけ警護」が発動されれば、政府軍と交戦する可能性は高い。

PKO5原則も崩壊

 政府が派遣の前提とする「PKO参加5原則」の「紛争当事者間の停戦合意」「国連平和維持隊の中立的立場」もすでにない。

 国連南スーダン派遣団(UNMISS)の現地指揮者である楊超英・軍司令官代理は「(大統領派と前副大統領派の対立について)和平合意が維持されているとは言えない」と述べている(11/26朝日)。

 国連のPKOは、1994年のルワンダ虐殺を機に「保護する責任」を明確にし、現在は紛争の当事者として「住民の保護」が筆頭任務となった。コンゴの国連PKO「介入旅団」は、2013年から武装勢力に先制攻撃する紛争の当事者として活動している。南スーダンPKOも、2014年から交戦も辞さない住民保護に任務が変更されている。それは、国連職員や施設等への攻撃が予想される場合に、政府軍、反政府軍という攻撃の主体にかかわらずPKO部隊による先制攻撃を認め、地域防護部隊を創設した8月の国連決議に端的だ。もはや南スーダンPKOに「中立性」を求めること自体無意味となっている。

 「PKO参加5原則は満たされている」という安倍の言い分は真っ赤なうそだ。

駆けつけ警護反対は56%

 派兵された自衛隊が新任務を実行すれば、戦後初めての政府軍という「敵軍」との交戦となる。これは憲法が禁じる武力行使そのものだ。

 「PKO参加5原則」の完全崩壊は明らかで、自衛隊はただちに撤退しなければならない。しかし、安倍は、戦争法に基づく新任務を現地で実行させることで自衛隊の武力行使をもくろんでいる。殺し殺される現実の戦闘によって憲法9条否定の実態をつくり出し、憲法改悪の突破口にしようとしているのだ。

 朝日新聞世論調査(11/19〜11/20)では、南スーダン派兵部隊に駆けつけ警護付与に反対が56%と賛成28%の倍となり、安倍内閣支持者でも反対が44%と賛成43%を上回った。内戦状態の南スーダンの現状と新任務の実態を知れば賛成はできない。すべての市民に真実を伝え、新任務を実行するな、自衛隊は直ちに撤退せよの声を圧倒的多数に変えよう。南スーダンから自衛隊は撤退せよの闘いを強め、改憲を進める安倍政権を打倒しよう。



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