2016年12月09日発行 1456号

【不登校元当事者、親が訴える/STOP!教育機会確保法案/不登校は病気?カルテが警察へ!/子どもを分類、排除し、囲い込む】

 不登校の子の教育機会確保をうたう法案が11月22日、衆院本会議で可決され、今国会で成立の見通しと報じられている。翌23日都内で、不登校を経験した当事者や親たちが集い、法案反対を訴えた。

 「STOP!教育機会確保法案 緊急大反対集会」を主催したのは「不登校・ひきこもりについて当事者と語りあういけふくろうの会」。世話人の伊藤書佳(ふみか)さんは「学校以外の学びの場をひらくとか言われるが、そういう内容ではない。子どもを分けて排除し、排除した上で社会の別の場所へ包摂しようとするもの」と批判する。

 専門家・研究者が法案の及ぼす危険を指摘。「新たな分離教育システムであり、それを民間に任せていく動きになる」(日本社会臨床学会・中島浩籌(ひろかず)さん)、「“支援”を名目にした差別的な取り扱いがすでに初等中等教育局長の通知(9/14)に基づいて始まっている」(東京大学・金井利之さん)、「登校拒否の子が学校から勧められて精神科を受診する時代。この法律で医療機関との連携は強まる。本人も親もあずかり知らないところで個人記録が共有されていく」(子ども相談室「モモの部屋」・内田良子(りょうこ)さん)

 会場がとりわけ真剣に聞き入ったのは、不登校経験者3人と親2人の発言だ。

 30年以上前、不登校を病気とされ、入院させられたという女性は「衆議院の委員会で、カルテ(児童生徒理解・教育支援シート)は警察に流れるとはっきり言っていた。怖い。私が学校を休んだのはたった8日。カルテは3日目から情報共有し、7日目から作成される。私と同じように病院に回される子どもが増えるのでは、と居ても立ってもいられない」。

 中学校生活に体も心もついていけなかったという女性は「不登校の子は“いてはいけない存在”ということを大前提に法案はつくられている。今の社会は生きるのに楽ではないけれど、それは不登校だったかどうかに関係ない。“学校は行くべき”と思っている社会の顔色をうかがいながら生きていくのは、自分を押し殺すことになる。別枠で教育の機会を確保しても不登校の子の救済にはならない」。

 フリースクールに通ったものの、そこにもなじめなかったという女性は「“学校を休んでいいよ”という言葉に違和感。復帰が前提になっている。めざす形があって、子どもを当てはめる。ペースに乗らない子は別の場所へ避けられ、同じような子しか周りに残らない。国からの監視のまなざしはどこまでもついてくる。たどり着くのはどんなところだろう」と案じた。

 子どもが不登校になった親の立場からは「『不登校は誰にも起こり得る』は『学校がこのままであり続けるなら不登校は誰にも起こり得る』と言うべきだ。学校をそのままにしておいて、耐えられないやつは勝手に外に行けと言われるのは納得できない」「一番大切だったのは、子ども一人ひとりに違う線路があると思えるまでの時間、お正月に親戚から『何年生?』と聞かれても『うちはうちで結構』と思う強さをもらえるまでの時間。法案が実施されれば、この時間は奪われてしまう。ここまでされて退(ひ)けない。カルテ問題で自治体に申し入れるなど地域で取り組みたい」。

 今後の闘いの方向について小児科医の山田真さんは「原発自主避難の子へのいじめは大人が避難者をどう見ているかの反映。私たちの力の足りないところ。学校教育について地域で語り合う場も少なくなった。この法案のことを地域のどれだけの人が知っているだろう。もっと広い人たちに分かってもらい、対抗する地域をつくっていかなければ」と話した。



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